地形効果をメンテナンスする男が、エルフの悪女に騙されてタダ働きする話
秋山機竜
プロローグ エルフの色仕掛けに気をつけろ
登山家に対する、定番の質疑応答を思い出してほしい。
なぜ山に登るんですか? そこに山があるからです。
あれと同じなんだ、俺がエルフのおっぱいを求める理由は。
なぜエルフのおっぱいのために無償労働してしまうんですか? そこにエルフのおっぱいがあるからです。
「ってわけだから、エレーナ、契約書の通り、無償労働の報酬として、おっぱい揉ませてもらうぞ」
俺は下心を丸出しにしながら、エレーナという金髪巨乳エルフに迫っていく。
本当に素晴らしいおっぱいだった。
大きさ、形、角度、すべてがパーフェクトだ。
ただ歩くだけでも、たゆんたゆんと揺れて、それでいて形は崩れない。
まるですべての男を包み込むように谷間は深くて、ゴムのように弾力があるものだから衣服と防具を内側から押し上げていた。
さすがエルフのおっぱい、人間のおっぱいとは比べものにならないぜ。
こいつを揉めるなら、いますぐ死んでもいい!
「あんた商人のくせに、契約書をちゃんと末尾まで読まないから、そうやって騙されるのよ」
エレーナは、契約書の備考欄を指さした。
【なお本案件は、依頼者エレーナの体に一切触れてはならないものとする】
「し、しまった! 目先のおっぱいに目がくらんで、こんな初歩的な詐欺に引っかかるなんて、俺のバカバカバカ!」
この案件は、モンスター退治を手伝ったら、エレーナのおっぱいを揉ませてもらう契約だった。
だが見てのとおり、備考欄でひっくり返されてしまったわけだ。
よい子のみんな、契約書はちゃんと最後まで読もう。おいしい取引だと思ったら、備考欄にマイナス要素が書かれていることがあるぞ。
エレーナは、退治したモンスターからお宝を回収すると、高笑いした。
「本当にバカな男ねぇ。これで何度目よ、あたしに騙されて、無償労働するの」
「これで三十二回目で、最初に騙されたのは三年前だ」
「なんでちゃんとカウントしてるのに、毎回同じ方法で騙されるわけ……?」
「俺だってさ、もう二度と騙されるもんかって毎回誓うんだよ? でもエレーナのおっぱいが視界に入ると、性欲に理性を破壊されるんだよ」
自分でいうのもアレだが、男なんてのは、女の色香に引っかかって大なり小なり損する生き物なのだ。
そこから学習して、もう二度と同じ失敗をしないように、ちょっとずつ大人になっていく……はずなんだが、俺はエルフのおっぱいに弱かった。
「せっかく有能な地形効果職人なのに、そんな致命的な弱点があるなんて、神様もよくわからない生き物を作ったもんね……」
「ってわけだから、次回こそは騙されないぞ。お前の依頼は引き受けないし、たとえ引き受けてもちゃんと金銭の報酬を受け取るんだ」
今度こそ学習するのだ、エレーナと関わったら損をするのだと。
だがエレーナは、まるで俺をおちょくるように、別の角度で攻めてきた。
「ま、なんでもいいんじゃない? ほら、今日の稼ぎは結構よかったから、一杯ぐらいおごってあげるわよ」
エレーナは大酒飲みだ。一杯とかいいながら、浴びるように飲むだろう。
チャンスだ。エレーナが泥酔したところで、歯の浮くようなセリフで口説いたらワンチャンあるはず。
…………落ち着け、俺。ついさっき、こいつと関わったら損をすると学習したばかりではないか。
という俺の葛藤を見抜いたかのように、エレーナがとんでもない提案をした。
「もしあたしが酔いつぶれたら、あんたの好きにしていいわよ」
俺の理性は秒で吹っ飛んだ。
「その条件、ぜっっっったいに忘れるなよ、あと曲解もなしな」
「曲解なんて必要ないわよ。あたしが酔いつぶれるはずないし、真っ先に酔いつぶれるのはあんたよ」
「上等だこの野郎、今晩こそ俺のモノにしてやる!」
こうして街の酒場で浴びるように飲んだのだが、酔いつぶれたのは俺のほうだった。
小鳥のさえずりで目を覚ますと、エレーナはすでに別の街に出発していて、酒の支払い伝票は俺の名義になっていた。
「なにが一杯ぐらいおごってあげるわだよ、結局酒代まで俺が払うんじゃないか……!」
しかも酒代を全額払えるだけの金貨を持っていなかったので、足りない分を皿洗いと店内清掃で勘弁してもらうことになった。
なんたる屈辱だ。やっぱりエレーナと関わると大損するんだ。これに懲りたら、もう二度とあいつの依頼は受けないようにしよう。
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