プロット・設定
■03: ボーダーライン(仮)
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エピソード「ボーダーライン」の断片・プロット
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6月
囚われた情報部のエージェントの救出任務が彩乃たち渋谷チームに下る。(ただし、彩乃たちのチームに依頼するということは人質の生死は問わない、むしろ処理することを想定している)
救出対象のエージェントはパトリシアが養成学校にいた頃の先輩で、ルームメイトだった人物。若干、感傷的になるパトリシア。
場所は都内。「会員制」のバーだった建物。
廃業後、通信販売会社に購入されるも、手つかずのまま数年。通信販売会社は幽霊会社で実態はなかった。しかしバーにはときおり出入りがあり、何かしらの活動はあるよう。買われた後、より悪趣味な会員制のバー「ヘルズゲート」として密かに営業していた。
売買春や薬物取引はおろか、人身売買や殺し屋紛いのことまでしているらしい。「組織」が介入するきっかけは、帝都大学の監視対象サークルの関係者がこのバーに出入りしていることが確認されたこと。
潜入捜査として3人のエージェントが作戦に参加していた。
裏切りがあり、信号が途絶。
その後、ある日突然、信号が復活。救難コードを受信する。それと同時に送られてきたバイタルサインから1人のエージェントが囚われ、拷問を受けていると推測された。
こうした状況から、救難信号は罠と目されている。それゆえに「組織」は、情報部の人質救出チームではなく、彩乃たちを使うことにした。
潜入捜査から得た情報では、「ヘルズゲート」に出入りしているテロリスト(仮)の中には、元特殊部隊の経歴を持つ人物がいるらしく、メンバーはある程度のトレーニングを積んでいるらしかった。
武器庫には自動小銃や軍用爆発物などがあり、レベル3の防弾装備もあるという情報だった。
――
突入作戦が開始される。
ドローンと地上の観測装置を組み合わせたスキャン。
心拍センサーと併せて、建物内の人員配置がリアルタイムに映し出される。
殺人に対しての、迷いの消えないパトリシア。
彩乃は言う、殺すにしろ殺さないにしろ、撃ってもらわないと困る。手足に中てるのでもいいし、牽制するのでもいいから、とにかく仕事をしてくれ、と。
幸い?にも今回の相手はプレキャリに防弾プレートを仕込んでいて、頭を撃たない限り、そう簡単には死なない。気にせず撃て、と。
彩乃たちの襲撃を受け、テロリスト(仮)たちは応戦する。
攻めるトレーニングはしていても守るトレーニングはしていなかったテロリスト(仮)たち。使っている銃の火力は同等のはずだが、彩乃に圧倒され、瞬く間に倒されていく。
一方、彩乃とは別ルートで突入したパトリシア。
致命傷を与えないようにしながら、敵を制圧していく。
そして、捕らえられたエージェントを発見する。
エージェントは心身ともに大きな傷を負っており、助けが来たことにも気付いていない。そんな彼女に、パトリシアは過去の自分の姿を幻視する。
彩乃は、敵の銃を使って彼女を「処理」し、敵によって処刑されたことにしようとする。
それを止めるパトリシア。自分がやる、と。
パトリシアは、自分の銃でエージェントを撃った。今回は、泣くこともなく、不快感に襲われることもなかった。
パトリシアは、一つ問題を乗り越え、暗殺者として一歩進むことになる。
◆ ◆ ◆
――以下、出来ている部分の断片
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近場のビルの塔屋看板下のスペース。
そこに猫澄は陣取っていた。
対象建物の屋上と、正面の道路を見通せる。距離は200メートル強。
身を乗り出せば、向かってこちら側も狙えるが、そこまで大胆な行動はさすがに第三者に存在を知られるリスクが大きい。逃げる敵がいるなら、無理に撃つより周辺で監視している情報部に任せればいい。
ライフルサドルを載せたカメラ用三脚に据えたボルトアクションライフルで、建物を見張っている。
カスタムR700――使用弾薬6.5mmクリードモア。16インチ銃身、KRG製シャーシ、Cadex製のレシーバー、TriggerTechのトリガーなどで構成されたレミントン・モデル700。ナイトフォース製の4‐20倍可変スコープ、サンダービーストアームズ製のサプレッサーとハイダーを装着。スコープの前にはクリップオン式の戦術装備。16インチという狙撃仕様にしては短めの銃身と折り畳み式の銃床も合わさり、ギターケースに収納可能なコンパクトな構成。16インチの銃身は、使用弾薬のパフォーマンスをフルに引き出すには短い銃身だが、それでも近中距離でマンターゲットを撃つには十分な性能を発揮できる。
200メートル程度の距離で使うには多少大仰なライフルではある。しかし、50メートルでゼロを合わせてある.300ブラックアウト弾仕様のライフルでは、そのまま200メートルを狙った場合、照準点から頭一個分ほど落ちて着弾する。亜音速弾を使えば、さらに1.5メートル近く落下する。それに対して、100メートルでゼロインされた
事前情報で、敵はレベル3の防弾プレートを装備している可能性が高いとされていた。.300BLKも6.5CMもライフル弾対応の防弾装備を貫通できない。ならば、より打撃力が高いほうで殴ったほうが圧力をかけられるし、中てやすいほうが
「欲を言えば、わたしもあっちがよかったな」溜息交じりに零した。
猫澄は、もっと近い距離でドンパチやりたいと思っていた。最近は、狙撃支援の役割が多かった。仕事ができるならなんでもいいと言ったのは自分だが、少し欲求不満だった。好戦的な危険人物としての性は、どうしようもない。
都市内で強力な銃器の使用が許されてはいるが、無条件で撃ちまくれるという話ではない。当然、敵や一般人に見つかってもいけない。
特に今回の条件だと、ビル外での撃ち合いに発展した場合、流れ弾による周辺被害は必至だ。わざわざ200メートル離れた位置に陣取ったのも、発見される確率を下げるだけでなく、被発見時に敵方が無理にこちらへ撃ち返してこないようにするためだった。理屈の上では相手の銃の有効射程に含まれる距離だが、相当撃ち慣れていないと即座に射撃できない程度の距離感だろう。ましてや夜間で、向こうからすれば撃ち上げる形になる、難易度は決して低くはない。猫澄自身も、この条件の射撃を敵の立場でこなせと言われたらやりたくはなかった。
――
出入口は押さえられているはず。隣のビルの屋上へ飛び移れば、逃げ切れる可能性がある。このまま、黙って捕まるわけにはいかない。
男は、ドアを勢いよく開け放ち、屋上へ出た。助走も兼ねて、一直線に駆ける。
不意に、胸に衝撃が走った。一瞬、息が詰まり、思わず膝を突いた。
「クソッ、痛え――」
撃たれたのはすぐにわかった。被弾箇所を触る、防弾プレートが少し熱を持っていた。貫通はしていないし、痛みも動けないほどではない。
(撃たれた、どこからだ――)
顔を上げた。ほぼ無意識に正面に見える建物たちの高層階に目を走らせた。自分が撃つなら、どこから狙うかを考える。
数百メートル離れたビルの屋上広告に目が留まった。
狙撃手がいるなら、あの辺りだろう。
男はすぐに、その行動が過ちだと悟った。
逃げるよりも、攻撃者の所在を確かめることへ意識を割いてしまった。時間にして1~2秒の静止、息を吸って吐くほどの間。あまりにも長すぎた。
そして、立った状態での胸の位置と、膝を突いた状態での頭の位置――それらの高さがほぼ同じことに気付いた。
「しまっ――」
瞬間、二発目の弾丸が男の頭を撃ち抜いた。
■
――
仮面の女が、「ヘルズゲート」から逃げ果せたテロリストに告げる。
「こっちも部下を喪失しているの。正直、無能側の人間だったけど部下は部下。あなたたちの無謀に付き合って死んだ。それはわかる? だからね、埋め合わせはしてもらいます」
「つまらないこと言うわね。この話は相談でも、お願いでもないわ」
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