ポニーテールガール

@ramia294

第1話

 私は、花のOL。

 キャリアウーマン。

 同僚の、

 仲の良い、ポッチャリと可愛いあの娘。

 部長室のドアから、飛び出す。

 涙を流す、彼女。

 普段は、コロコロと笑う。

 あまり泣かない彼女

 笑顔の似合う彼女。


 泣かせたのは、舐めるような視線のいやらしい、

 セクハラ部長。

 仕事は出来ない、

 セクハラ部長。


 私の同僚のお尻、

 子犬の頭の様に。

 セクハラ部長の手。

 撫でまわす。


 ワンとは、

 鳴かない。

 尻尾の無い、

 私の同僚。

 傷つく心。


 女性の敵。

 セクハラ…部長。

 成敗決定。


 その日の残業。

 社内で、私一人。

 ショートヘアの私。

 少年のような、

 私。


 時計の針たち、

 気にする左。

 温かい自販機あり。 

 缶コーヒーの優しさ。

 すがろうとする私。

 午後9時まで、あと少し。

 左を指差し、重なる頃。

 部長、

 セクハラの相手を求め、

 社内を徘徊。


 私を発見する部長。

 しかし、着痩せする私。

 くびれは、鍛えぬいた手足の筋肉が。

 胸にあるのは、大胸筋。

 あの、柔らかい膨らみ。

 私には見当たらず。

 少年の様な…。

 私の身体。


 部長。

 私には、興味がないと、立ち去ろうとする。

 しかし。

 同僚の復讐のチャンス。

 見逃さぬ私。

 私は、正義のヒロイン。

 ポニーテールガール。


「待ちなさい部長。よくも私の同僚のお尻。撫でまわしたわね。あのに謝罪してもらうわ」


「何を言っている。お前の様な痩せすぎのギスギス女に興味はない。お前は黙って仕事だけしていればいい」


 部長の発言。

 地獄への片道切符。


 私の右手に持つ、

 一束の髪を、

 ショートヘアの私の後頭部へ


「変身、ポニーテールガール!」


 本当は要らないかけ声と共に、

 まばゆい光に包まれ、

 変身する私。


 筋張った、ギスギスの手足は、

 白くて細いしなやかな手足に。

 くびれは、ウエストに。

 胸の

 豊かな膨らみ、

 私に戻る。


 赤い唇と愁いを含む怪しい光を放つ目。

 白い肌とポニーテールの揺れる髪。


 そして、

 そして…。


 白い私の肌を

 遠慮がちに包む。

 私のビキニアーマー。

 大人の魅力。

 溢れ出す。

 私のビキニアーマー。


 一瞬で、部長の鼻の下、 

 伸びて。

 ふらふらと私に、近づく。

 ニーハイのヒールブーツのキック。

 部長の顔に、叩き込む。

 意識を失う部長。 


 幽体離脱の様に、

 部長から分離する

 そいつ。


 やはり、部長の身体に取り憑いていた。

 そいつ。

 異世界からの侵略者。


 形をとる

 そいつの右手には、剣。

 左手には、丸く小さな盾。

 今回は、中世の騎士のような人型。

 素早く動き、

 私の身体に切りつける。

 剣。

 

 わずかに、かわし。

 肘打ち、むき出しの顔に叩き込む。

 慌てたように、やみくもに剣を振る。

 騎士。

 異世界の騎士。


 距離をとる私。

 頭に手を伸ばし、ポニーテールを掴む私。

 外すポニーテール。

 右手のポニーテール。

 伸びる。

 私の手の中で、鞭になり。

 自在に、動く武器になる。


 剣の届かぬ距離。

 ポニーテールの鞭が、

 異世界の騎士の鎧。

 金属の鎧、

 引き裂く。


 強固な盾。

 断ち割る。


 その剣。

 へし折り。


 異世界の騎士。

 その身体、

 引き裂く。


 無敵の私のポニーテールの鞭。

 無敵のビキニアーマーの私。


 異世界の騎士。

 倒れる。


「何故?」


 異世界の騎士の命の火、消えかける。


「この世界では、セクハラは、ダメなの」


「そんな!愛情表現なのに」


「愛情表現なら、もっとイケメンの肉体を乗っ取るべきだったわね。この世界で、お腹の出た、ハゲのオジサンの愛情は、誰にも受け入れられないのよ亅


 哀れ。

 異世界の騎士。

 と、作者。


 この世界の、若き女性の好み知らず。

 騎士。

 その命、

 散らす。


 自らのお腹を見る、

 作者。

 涙を、

 散らす。


 最後のポニーテールのムチが、異世界の騎士へ伸びていく。

 その一撃に、

 騎士の命の火。

 砕け散る。


 騎士。

 その、最後のひと言。


「ポニーテールガール?ガールと言うには、少々無理が…」


 直後。

 その姿。

 塵と化す。


 次元の壁。

 引き裂き、

 異世界からの風。

 侵入。

 かつて、彼の身体だった塵を運ぶ。

 異世界へ帰っていく塵。

 と、化した騎士。


 最強の鞭。

 ポニーテールの一束に戻り、

 OLの姿に、キャリアウーマンの姿に戻る私。


 意識取り戻す、部長。

 仕事は出来ない、

 部長に戻る。

 いやらしい舐めるような視線を持つ、

 部長に戻る。

 しかし、

 セクハラをする気力を失う。


 その姿、

 突然老ける。


 翌日から、あちらこちらで、部長の被害の報告上がる。

 裏から、手を回す私。

 正義の味方の本当の顔。

 容赦しない、私。


 セクハラ。

 役員会。

 部長の処分決める。

 会社を去って行く部長。


 去りゆく、

 小さな背中。

 罵詈雑言を投げつける、

 被害者の彼女たち。

 と、私。


 一週間後、廃人となった、かつての部長。

 病院をフラリと出てゆき、

 行方不明となる。

 地獄への片道切符。


 セクハラ部長、

 無事、地獄へ到着。


 私は、ポニーテールガール。

 セクハラを許さない。

 愛と正義の戦士。

 異世界からの使者。


      (✿ ♡‿♡)


        


 

 



 


 

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