第6話 もっとお互いについて知ろう

「ふぅ、ごちそうさまでした。今日もおいしかったぁ」


「満足してもらえたようでよかったよ」


 葛葉ちゃんと一緒に楽しい食事タイムを過ごした後。

 葛葉ちゃんの隣に座った私は、話を切り出した。


 いろいろ考えたんだけど、私たちってまだお互いのことを性格なんかの表面的な部分しか知らないじゃん?

 やっぱりさ、仲を深めるためには相手を知ることが一番だと思うんだよね。


 というわけで、


「お互いに質問しあいっこしましょ」


「しつもん?」


「自分が気になるな~ってことを相手に聞くことだよ」


「なるほど~」


「じゃあ、葛葉ちゃんからどうぞ。気になることがあったら、なんでも聞いてね」


 私がそう言うと、葛葉ちゃんは腕を組んで考え出す。


 ……腕の組み方が私と一緒なんだけど、もしかして私の真似してるのかな?

 だとしたらてぇてぇすぎんか!?


「はいはいはい! しつもん思いついた!」


 葛葉ちゃんは元気よく手を上げると、ちょっとだけ不安そうな感じで聞いてきた。


「なるせお姉ちゃん、葛葉のことすき……?」


「大好きですッ!」


 私はサムズアップしながら即答する。

 こんなの考えるまでもないね。

 脊髄反射で即答だよ。


 葛葉ちゃんは食い気味に答えた私に少し驚いてから、表情をぱぁぁぁと輝かせた。


「やったぁー!」


「今度は私の番ね。葛葉ちゃんは何が好きなの?」


「なるせお姉ちゃん!」


「おっふ……」


 即答で返された……!

 即答で返されたんだけど!

 嬉しすぎて思わず吐血しそうになっちゃったよ!


「ありがとね、葛葉ちゃん。すごく嬉しいよ。他には何か好きなものないの?」


「んーっとね…………なるせお姉ちゃんがつくってくれるお料理がすきだよ!」


「そうかそうか~」


 よし、今度から料理する頻度増やそう!

 私はひそかに決意するのだった。


「つぎは葛葉がしつもんする! なるせお姉ちゃんはなにがすきなの?」


「私はね~、葛葉ちゃんと一緒にいる時間が好きだよ」


「じゃあね、じゃあね。葛葉がぎゅ~ってしてあげる!」


 そう言った葛葉ちゃんは、私の体にぎゅっとくっついてきた。


「これでいっしょだね!」


 一生こうしていたいです……!

 てぇてぇ。


「次は私の番だよ。葛葉ちゃんは何か得意なことはあるの?」


「んーっとね…………そうだっ! 葛葉すごいことできるんだよ!」


「わぁ、それは楽しみ」


「みせてあげるから、ちゃんとみててね。いくよー、えいっ!」


 可愛らしく叫んだ葛葉ちゃんが、ポンっという音と共に煙に包まれる。

 煙が晴れた時、そこには小さな狐が立っていた。


「こん」


「可愛い! え!? 葛葉ちゃん狐に変身できたの!?」


「こぉぉん」


 狐状態の葛葉ちゃんは得意げに鼻を鳴らす。

 葛葉ちゃんって、狐獣人というよりは化け狐的な存在なんだね。


 ……それにしても、可愛い。可愛すぎる。

 愛くるしさがあふれて止まないんだけど!


「ちょっと撫でさせてくれないかな?」


「こーん!」


 葛葉ちゃんは「いいよー」って感じで私の膝に座ってきた。


 すでに気持ちいいんだけど、思いっきり撫でたらどうなることやら……。

 私は唾をゴクリと呑み込んでから、葛葉ちゃんを優しく撫でた。


「ふぉ、ふおぉぉ……!」


 何これぇ……。もふもふすぎて最高なんですけどぉ……。


「きゅ~」


 葛葉ちゃんも気持ちよさそうに声を上げる。

 狐状態でも相変わらずてぇてぇ。


 これでもかというくらいもふもふを堪能したところで、葛葉ちゃんはいつものケモミミ幼女に戻った。

 私の膝にぐでーんと乗ったままの状態で話しかけてくる。


「つぎは葛葉のばん~。……しつもんじゃないけど、もうすこしこのままでいていい?」


「むしろ、ずっとこのままでもいい!」


「それはめっ! だよ。なるせお姉ちゃんにめいわくだから」


 相変わらず健気でいい子だねぇ。

 心が……心が癒されていくよ……!


「つぎ、なるせお姉ちゃん!」


「いいの? それじゃあ……葛葉ちゃんのお誕生日はいつかな?」


 やっぱり誕生日を聞くのは定番でしょ。

 それに、葛葉ちゃんの誕生日が分かればお祝いもできるしね。


「おたんじょーびってなぁに?」


「生まれた日のことだよ。私は十一月だから秋だね」


「葛葉のおたんじょーび…………たぶん、春くらいだとおもう。お日さまがポカポカしててきもちよかったもん」


 春ってことは、今年の誕生日は過ぎてることになるね。

 それと、この前の五月五日……子供の日にも何もしてあげられてなかったからなぁ。


「よし、決めた!」


 私はポンっと手を叩く。


「なにをきめたの?」


「今度、葛葉ちゃんのお祝いをしようと思う」


「おいわい!? なんの!?」


 興味津々な様子で聞いてくる葛葉ちゃん。

 うん、葛葉ちゃんなら絶対に食いついてくれると思ったよ。


「葛葉ちゃんのお誕生日会だよ」


「おいしいお料理たべられる?」


「もちろんだよ。プレゼントもあるから楽しみにしててね」


「ぷれぜんと! 葛葉、おたんじょーびかい楽しみ!」


 楽しげにはしゃぎまわる葛葉ちゃんてぇてぇ。

 これだけ楽しみにしてくれてるんだから、最高のお誕生日会にしてあげないとね。


 葛葉ちゃんのお誕生日会を成功させるべく、私はひそかに気合いを入れるのだった。


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