ドリップコーヒー
鳥海 摩耶
ドリップコーヒー
袋を開けると、香ばしい匂いが私を包んだ。
細かい
じわじわと染み込んだ熱湯が、乾ききった豆たちに仕事の時間を用意する。
ぽつぽつと、雨粒のようにしたたる
それは、糸を採るためにのみ生かされる、
一粒ひとつぶ、丁寧に。
あわてても、のろまでもいけない。
最適なタイミングで、おとす。
そうしてできあがった、
さぞ、痛かったろう。ほんとうは、彼らはみな木となっていたのだ。
この一杯は、何本分だろう。
そんなことを考えながら、私は最初のひとくちを口に含ませた。
苦い中にひろがる、
これは
罪深き人々は、この香りと味わいの
以来この黒い飲料は、世界中の人々の魂を
私も、囚われの身である。最初は嫌で仕方なかったのに、いつの間にかこの様である。
解放されたいとは、もう思わないだろう。
ドリップコーヒー 鳥海 摩耶 @tyoukaimaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます