魔王を倒した私は、お姫様と結婚します!
久瑠璃まわる
天才剣士 カレンちゃん!
プロローグ 魔王討伐
ここはガーダス大陸の西部に位置する国。周辺の大陸には魔王が棲む恐魔大陸が存在し、ここフルーク聖王国では、不定期的に現れる魔物や魔獣の対策に心血を注いでいた。
攻めてくる敵を幾ら倒してもキリが無く、魔王が棲まう恐魔大陸へと向かおうモノなら悪魔や変異種に嬲り殺される。
魔王の勢力に対して後手に回るフルーク聖王国にも希望の光が存在した。
悪きモノを選ばれた聖剣と秘宝の装備で薙ぎ払う勇者。世にも珍しい治療を魔力を持ってして行う聖女。彼等彼女達の存在を持ってしてフルーク聖王国は魔王の軍勢を久しく押し返し、なんと魔王を倒す、その目前へと辿り着く。
「お前の悪行もここまでだ!魔王っ!」
「くくっ、流石は勇者よ。世に蔓延る有象無象とは訳が違う!圧倒的力!私が捻り潰すに相応しいわ!」
勇者と魔王が荒れ果てた玉座の間に対峙する。勇者が装備している秘宝はあちこちが欠けており、整った顔には血が垂れている。
「大丈夫っ!私がいる限り勇者は死なせはしないっ!」
立ち上がる聖女の姿。その姿は出立前の綺麗さが面影も無い程に血や煤、泥で汚れている。
意識を強く保たないと、今にも膝から崩れ落ちそうだ。
「それでこそ伝説と謳われる存在よ!さぁ!コレで最後だっ!その蛮勇っ!受けてたとう!」
こうして勇者が聖女そして魔王の最後の戦いが始まった。
この世のモノとは思えない強大な魔力量を誇り、現存するほぼ全ての魔術を行使し得る魔王。その威力は凄まじく、一般の魔術師と、同じ魔法であっても桁外れの被害を生む。
対抗する勇者も人としてずば抜けた身体能力を誇り、魔王の苛烈極まりない攻撃を既の事で躱し続ける。彼の持つ聖剣は、どんな攻撃にも耐え、あらゆるモノを切り裂き悪しき力を封印すると言われる、人類が持つ至宝の一つ。
3人の攻防は激化の一途を辿り、魔王との開戦から数えれば丸一日経っていた。
だが、拮抗は突然として崩れ去る。
「っは!ここだぁっ!」
「!......くっ!まさか私がこのような致命を負うなどっ!」
聖剣が脇腹を抉りそのまま引き抜いた。さしもの魔王も長期戦で魔力に余裕も無く、踏ん張れる気力も少ない。
「はあっ、はあっ......魔王。コレで終わってくれ。......お前がもし人間に生まれて、出逢えてたら絶対友達になれたぜ」
「......」
勇者が天に掲げた聖剣に内に残る魔力をありったけ込め、その銘を口にする。
「オーヴァーラップっ!エッジ!!!」
こうして永きに渡る人類と魔王との戦に一旦の終止符が打たれた。
「良くやってくれた。勇者カリア。其方は誰もが讃える偉業を成し遂げた。さぁ、其方の望みを我、ギヌヴァ・フルーク・ラ・ロアが叶えよう。顔を上げ己が言葉で示すが良い」
「はっ!有り難き御言葉」
時と場所が変わり、ここは王城内にある謁見の間。2対の玉座に王と女王が座りその隣に王女が座っている。周りには貴族の方々が並んでおり、私が何を言うか聞き逃さないと耳を傾けていた。
「私の望みは、ただ一つ。......王女、レガート・フルーク・ラ・ロアとの婚姻でございます」
無表情だった貴族が驚いたように眉を上がり、どよめきがこの場を支配する。それも当たり前の事。魔王を倒した偉業は過去にも存在する。だがその褒章として婚姻を求めた事例は皆無と言っていい。
そして何より......
「皆のもの、静かにせよ!勇者カリア。其方の望みしかと受け止めた。レガートよ、其方はどう答える」
「はい。お父様、私は喜んでカリアと婚姻を結ばせて頂きますわ。人となりは長年で理解しており、彼の出自も問題ありません。......勇者カリア。貴方が魔王を討伐してくれると、心の底から信じておりました」
私に向き直った整った顔は、慈愛に満ちた優しい微笑みを浮かべている。
「今一度、私からも感謝を伝えます。そして、これからも宜しくお願いねカリア」
少し茶目っ気が出てしまったが、おおよそ王女としての体を守り発言を終えた。
一部、納得していない表情をしている貴族もいるが、発言している私自身、全くその通りと全力で同意する。
なにせこの体は少女なのだから。
⭐︎⭐︎⭐︎
応援やコメント誤字脱字の指摘があれば私が泣いて喜びます。
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