013 ハンキーのプレゼン 魔力と科学 3/4
「ちょっと何してんだい?!商売道具だろ?」
同席していたアイダだけが声を上げたが、他のものは呆気にとられている。
ハンマーを叩きつけた一瞬だけ鈍い音が鳴ったが、アーティファクトは無傷だ。その上、衝撃が吸収されたかのように机も壊れていない。
「魔力を込めた全力で叩きましたが、結果はご覧の通りです」
大会議室は静まり返っている。最早、理解を超えたことが起こっていた。
「アーティファクトは、現在の技術では傷一つ付けられません。これがアーティファクトを見分ける条件のひとつです」
「・・・・つまり、他にも方法があるのか?」
軍から召集された大佐が沈黙を破る。
「我々が確認できているのは、あとひとつだけです。早速実演しましょう」
そう言うとハンキーはギターとアンプを結合し、音をならす。
既にアーティファクト「エレキギター」と「アンプリファー」は誰もが知るところだ。
大音量が鳴る、と全員が身構えた。
・・・・・・バンジョーやマンドリンよりも遥かに小さな音が放たれただけだった。
フリーズからいち早く立ち直ったのは音楽家や画家、写真家を纏めるアートギルド長だ。
「脅かすなよ、ハンキー。でも、どうして音が鳴らなかったんだ?」
「失礼。それでは本当に音を出します」
ハンキーが微弱な魔力をアンプに送り込む。
軽くギターを鳴らすと、今度はいつもより遥かに小さいが、アンプから音が出た。
その場にいるものは、誰もこの現象を理解できない。当然のことだ。
「大分出力を下げましたが、今のは電気魔法です」
「もうおわかりでしょうが、アーティファクトは電気で作動します。それが確認方法です」
ハンキーは両手を向かい合わせ、魔力を放ち始める。
『バチッ バチバチッ!』
指先の間に閃光が走る。それが電気だということは解明されていた。
だが、それだけだった。
「俄かには信じられん。電気魔法なんぞ役立たずの筆頭ではないか」
アークギルド長までがこんな調子だ。
この世界では電気を使った魔法や技は、いわゆる「ハズレスキル」であった。
大量の魔力を持つ超攻撃型でもなければ相手の動きを一瞬止める程度の威力だし、他に有効利用の方法がなかった。
黒焦げにするなら炎の方が圧倒的に効率が良いし、越冬には欠かせないエネルギーであるため、コスパ面で炎魔法を習得するものが全員といっても良いぐらいだった。
何よりの欠点は、雨の日に使うと術者自身が感電死することだった。
それにより水魔法と組み合わせれば必殺の威力になることは知られていた。が、その未知のリスク故、積極的に使おうとする者は皆無だった。
そもそも、汎用性の低さ(と信じられている)から修得者もほとんどいないという有様だった。
「私は西の大陸の出身です。そこでは電気の研究が行われています」
「今から電気エネルギーの有用性を説明します」
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