011 ハンキーのプレゼン 魔力と科学 1/4
「助けられた形だが、賊の狙いは君のようだな」
アーティファクトを狙う輩は多いが、そのほとんどがそれほど多くない懸賞金目的のチンピラや盗賊まがいの犯罪者だ。
しかし、こいつらだけは例外だ。
「すまないジョージ。順を追って話したかったが、思った以上に時間がない。すぐに関係者を緊急招集して欲しいんだ。すべて説明させてくれ」
「おいおい。アタシも巻き込まれてるんだけど、何もなしかい?」
仁王立ちしたアイダがハンキーを睨んでいた。町の女神を危険にさらした罪は重い。
「すまない、俺の傍を離れないでくれ」
「なんか、色々と合点がいったよ。ナイトは予想外だけど」
「ご覧のように弱い者にアーティファクトは任せられないさ。と言っても俺は戦闘タイプじゃないんだ」
(ハンキーより強い連中がゴロゴロしてるってことかい?何が起きてるんだい?)
ジョージは警察、軍、各ギルド長や町の資産家たちにまで招集をかけた。
皮肉にも町長がいとも簡単に襲撃にあったことで、只事ではない事態が理解できたようだ。
「先ずはお集まりいただいたことに感謝を。時間がないので本題へ移ります」
「5年後に目覚める魔王は、今回必ず討伐しなければなりません」
「討伐?封印はしないのか?」
最初に発言したのは建築ギルドの理事だ。
他の面々も言いたいこと、聞きたいことが山ほどあるだろう。
「結論から言うと、そうしなければ地球は滅亡します」
大会議室に集まった50人ほどの有力者たちにどよめきが走る。
「詳しく説明してくれ」
リーダー格であるジョージはやはり冷静だ。
皆、信頼を置いているのだろう。
ハンキーに注目が集まる。
「知っての通り、魔力は万物に宿ります。それは地球とて例外ではありません」
「我々の使用した魔力は最終的に空気や対象物から自然物に流れ、地球の魔力に変換されます」
「つまり、この地球に存在する魔力の量は常に一定で、循環しているだけなのです」
皆、ハンキーに飲まれていた。まるで科学者のような雰囲気と知識量だ。
これが吟遊詩人だと誰が信じるだろうか?
もちろん、声に魔力を込めているが。
「問題は次です。封印魔法はその場に魔力を留めるため、魔力の循環を止めます」
「無論、地球は超巨大な魔力の塊です。ちょっとやそっとじゃビクともしません」
「しかし、我々の封印魔法は強力になりすぎました」
「封印魔法の膨大な魔力は、魔王の力を相殺している状態です」
「これまでの封印で、魔王の力で汚染された魔力は地球には還元されていないのです」
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