第19話 どんでん返しの小説家デビュー

『僕らが保健室出身のワケ』19話

カフェで2人の男女が話し合いをしていた。

コーヒーフロートのアイスが溶ける瞬間をずっと見ていた橋本京香に名刺を差し出す男性がいた。京香はその名刺を見て驚く心を抑えて、コーヒーフロートのアイスを溶かしきっていた。名刺を差し出した男性が口を開くのであった。『キミの小説見させてもらったよ。とても良かったです。宮川文庫で書籍化しませんか?バックアップはこちらで全力でサポートしてきますので、どうかよろしくお願いします』

頭を下げる男性に京香は言った。

『じゃあ、私がどう言う人物か明かさずに、書籍化して下さい。あくまでも匿名で作者名はKにして、出したいんです。それを飲んでくれるなら書籍化してもOKです』

名刺を差し出した男性は渋々分かりましたと答えた。でも、彼は引き下がろうとしなかった。京香に向かって言ったのだ。

『名前はKで十分です。でも、話題性を保つには女子高生というワードが必要なんです。だから、お願いします。』

京香は切れてしまったのだった。

そして飲んでいたコーヒーフロートを男性の頭に思いっきりかけたのだった。

そして、彼に言うのだった。

『宮村さん、本を売るために情報を出したいのはわかるけど、作者の尊厳を大切にする事も必要なんじゃないんですか。小説家デビューをすることが夢でしたが、私のことを尊重してくれないなら意味ないです。帰ってください』

宮村さんは自分の顔やびちょびちょになった頭をハンカチで拭き、彼はまた来ますとひと言、言ってカフェを後にした。

京香はヒートアップしてしまったことを周りの方、そしてカフェの方に謝り、追加注文をした。そして、京香は美咲に電話をかけて呼び出した。

彼女に小説家デビューの話をしたら、美咲は言った。

『売れるために女子高生と言うワードを使いたいくらいなら、京香じゃなくてもよくない?京香しかない良い部分を出したいならもっと京香を大切にしてくれるはずだよ。そんな編集者とタッグを組んで本当にいいの?』

京香は確かになと思い、名刺をもらった宮村さんにその場で断りの連絡を入れることにした。『プルル...もしもし先程はすみませんでした。すみませんが、書籍化の話は無しにしてくれませんか。すみませんがお願いします』

すると慌てた様子で宮村さんは答えた。

『先程は、未熟なことを言ってしまい申し訳ありませんでした。編集部にも匿名で小説を出すことに了承を得たので、どうか書籍化を一緒に頑張っていきませんか?よろしくお願いします』

京香はひと言電話口で言った。

『はい。よろしくお願いします』

電話をきり、美咲に言った。

『やっぱり私、小説家として宮村さんとやってくって決めた。相手が折れてくれるかたちになっちゃったけど、美咲サンキュー』

美咲はそんなホッとした京香を見て言った。

『良かったじゃん。これからは京香先生って呼ばなきゃね』

京香は照れながら言った。

『いやいや、まだまだ先生と呼ばれるほどじゃないよ』

その後、11月5日に京香の処女作である『独りよがりな未熟者』が発売された。

保健室の友達は京香のために10冊買って、布教活動をしたのだった。

京香はそんなみんなに感謝したのだった。

保健室の田島先生も読了し、京香にサインを書いてほしいと言われ、京香は作者名のKを大きく書いて、田島先生にありがとうございますとお礼をした。

紆余曲折あったけど、本がみんなの前に届く嬉しさに京香は涙が出たのだった。

次の話はついに山川連司が卒業式を迎える話である。

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