第15話 僕が見た景色は初めての光景

『僕らが保健室出身のワケ』15話

12月9日ダイゴが歌手としてついにデビューを果たしたのだった。

デビュー曲は『明日の道』だった。

この曲は病床でダイゴが作詞作曲した曲だった。

300人くらいが入る会場でダイゴは歌うことになった。

リハーサルで握るマイクに汗が付き滑りやすくなっていた。

ダイゴは音羽プロデューサーにマイクが落ちないように、マイクと手をぐるぐる巻きにして欲しいと頼んだのだった。

こんなトントン拍子でデビューが決まるとはダイゴは思っていなかった。

改めて全ての人にありがとうと言いたいぐらいだった。

12月9日のデビューコンサートに、保健室の友達も田島先生も来てくれることになった。

僕はやっとみんなに恩返しできると思ったのだった。

リハーサルが終わり、午後6時に開場となり午後7時に本番が始まる。

僕は今までにないくらい緊張していた。

そんな僕に音羽プロデューサーは言った。

『実は、保健室の田島先生からキミに預かっていたものがあって...』

それは、イヤモニだった。

しかも、特製のイヤモニで色は青で真ん中にダイゴのDが書かれていた。

ダイゴは驚いたように言った。

『これ...どうしたんですか?なんでこんなものくれるんですか?』

そんな驚いたダイゴに音羽プロデューサーは言う。

『それはね、保健室のみんなが力を合わせてお金を出し合って特製のイヤモニを特別作ってもらったんだって。本番、1人じゃないよ。みんながいるからって意味でね』

ダイゴはイヤモニをまじまじと見て、音羽プロデューサーに言った。

『みんなにありがとうって言っといて下さい。僕、僕の歌を届けに行ってきます』

そう言って、午後6時55分ステージのカーテンの後ろでイヤモニを付け、午後7時になるのを待っていた。

午後7になり、ダイゴは観客の前に飛び出して言った。

一言目に話した言葉は『僕がダイゴ。よろしくお願いします。みんなのために僕は歌を歌いに来ました。今日は僕のデビュー曲『明日の道』を歌います。聞いてください』

最初はアカペラで『いつかの日が心を脅かすんだ』次にピアノの音と一緒に『ねえ、キミは明日の先にある道を生きるか』とダイゴは歌った。

『明日の道』を歌い上げたところで、観客から拍手が湧いた。

次の曲に行く前にダイゴは自分の話をした。

『僕の名前はダイゴ•ジェームズです。僕はハーフだけど日本語の勉強もして少しだけ日本語が喋れます。本当にlittle bitだけどね。僕は今高校2年生です。学校の教室に入ることは出来なくて、保健室登校をしています。原因は高校1年生の頃のいじめです。僕は学校に居場所がなかったです。でも、保健室の先生が僕に居場所や優しさをくれました。

僕が今、生きていられるのは保健室の先生や保健室で出来た仲間のおかげです。そして、今僕には音楽があります。音楽が僕に楽しさをくれました。そして、音楽を機に音羽プロデューサーにも出会い、こんなにたくさんのファンにも出会えました。皆さん、本当にありがとうございました』

そう言って彼は全部の歌を歌い上げ、最後は深々と一礼をし、デビューコンサートが終わりました。

ダイゴ•ジェームズくんは、音羽プロデューサーとデビュー後も仲良く次のショーに向けて、話し合いや反省点について語り合いました。

ダイゴくんの次の目標はYouTube登録者人数を50万人にすることと、コンサートを日本一周することである。

そんな夢をダイゴと音羽プロデューサーは絶対叶えると言っていた。

ダイゴの歌を聴いて田島先生と保健室で出来た友達は拍手喝采だったそうだ。

ダイゴの歌を聴いて橋本京香は背中を押され、花岡美咲は塞ぎ込んでしまった。

次の話は橋本京香の勇気が出た話と花岡美咲が保健室に来なくなった理由である。

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