第12話 言わなきゃ伝わらなかった

『僕らが保健室出身のワケ』12話

次の日の放課後に三崎は他4人を空き教室に呼び出したのだが、久郷くんは教室の前で立ち止まっていた。

三崎はそんな久郷くんに声をかけた。

『どうしたの?久郷くん。教室に入るだけだよ、みんなと少し話すだけだから。そんなに身構えなくても大丈夫だよ』

久郷くんは大きな体を小さく丸めてかがんだ。

久郷くんは誰が言葉をかけようと動かなくなった。

そんな時間が1時間経ち、周りはどうすればいいのかわからなくなっていた。

そんな時、本をたくさん持った橋本京香が久郷くん達を見つけて言った。

『あんた達!久郷くんに何したの?』

橋本さんは三崎くんに詰め寄り言った。

『彼とあなた達とは教室という場所がどういう意味を持つかが違うんだよ。むやみやたらにトラウマをほじくり返したらダメなんだよ。何も知らないで、大丈夫?久郷くん立てる?』

久郷くんは周りのみんなにごめんと言って立ち上がった。

三崎くんも久郷くんに謝った。

『ごめん、俺が変なふうに誘っちゃって、じゃあさ教室じゃないところでだったらパソコンできるかな?どこがいい?』

久郷くんは即答で答えた。

『保健室がいい』

三崎くんは驚いたがメンバーを集めて保健室へと向かうことにした。

橋本京香さんに久郷くんはお礼を言い、橋本さんは図書室へと向かった。

三崎くんの仲間は、なぜ保健室なのかと疑問に思ったが、久郷くんのために誰も文句は言わなかった。

保健室に着くと、うつむいていた久郷くんがパッと明るくなり言った。

『本当にみんなごめんなさい。僕は教室より保健室の方が好きなんだ。苦手を克服しなきゃとは思うんだけど、僕には難しいんだ。だから、もしまたどこかで集まるってなったら教室以外にして欲しい。お願いします』

他の4人に対して深々とお辞儀をする彼に周りは揃って言った。

『そんなの気にするなよ。人には無理なことのひとつや2つあるし、教室じゃなくたってプログラミングはどこでも出来るし...ね』

保健室の前でそんな話をしていたら、ドアが開き目の前に田島先生が立っていた。

田島先生は笑顔で言った。

『声が大きくて全部聞こえてたよ。いつでもここでプログラミングとやらやってもいいからね。久郷くん、無理しなくていいからね。三崎くん、久郷くんのことよろしくね』

プログラミング同好会は保健室もしくはゲーセンもしくはカラオケで活動することになった。

5人で初めて作ったゲームは教科書通りだったけど、それでも初めて出来たゲーム嬉しさは堪らなく嬉しいものだった。

たまに来る山井先輩は面白い人でもう受験期なのに、大丈夫なのかと心配になるばかりだった。

久郷くんにとって、プログラミングが生活の一部になり始めていた頃、ダイゴからSOSがグループラインの保健室常連組に来た。

ダイゴにもピンチが訪れていた。

次の話はダイゴ•ジェームズとチームになった子との話である。

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