久しぶりの領地 その2
名前:守りの護符(使用済み)
説明:あらゆる生命の危機から一度だけ、使用者を守ってくれるお守り。
このお守りはエッセンから貰ったものだ。
説明の通り、一度だけ生命の危機に陥った使用者を守ってくれるというチートアイテムで、使用後にはお守りの紐が切れると言った分かりやすい方法で使用済みか否かを教えてくれる。
アルスは効果を今一度読み返しながら、切れた紐の部分を注視する。
紐が切れている。効果が発動したという事だ。
アルスは背中に攻撃を受けた時の事を思い出す。
あの時の強烈な攻撃。あの攻撃は俺を死に至らしめるほどの力を有していたという事か。
攻撃を受けた部分が燃えるように熱くなり、段々と体から力が抜けていくあの感覚。
あの時に受けた痛みがぶり返す様に、背中に違和感を覚えるアルス。
ははっ。あの時の傷は完全に癒えているはずなんだけどな。
刺された傷どころか、小さな切り傷一つない、綺麗な背中。鏡で何度も確認した。
もう二度と経験したくない、死へのカウントダウン。
アルスは痛みを忘れようと、首を横にブンブン振る。
危険を冒すのはあの一回にしておこう。うん。そうしよう。
「やはりアルスのだったか! 拾っておいて良かった。……本当に良かった」
キルクは浮かべていた笑みを落ち着かせ、じっとアルスの目を見る。
「アルス」
「はい」
「私を守ってくれて本当にありがとう。アルスのお陰で今の私の命があると言ってもいい」
自分の為に貴方を救ったんだ。
アルスは目的の為にキルクを救った事に罪悪感を覚えながら。
「大袈裟です。キルク王子の頑張りが無ければあのようにはいっていなかった……」
心の底から思っている事を嘘偽りなく話していたその瞬間。
キルク王子……?
一瞬、小さく笑みを浮かべたキルクがアルスへと迫り。
「っ!」
アルスの胸に顔を埋める様に抱き着く。
な、何が起こっているんだ?
状況が理解できないアルス。
馬車の物陰に隠れるようにして二人は話していたため、周囲には見られることはないだろう。
しかし、それとこれとは話が別。
っ、この状況はまずい!
思考がフリーズしていたアルスであったが、すぐに冷静になり、キルクを引きはがそうと肩を掴むが。
「もう少しこのまま!」
「……人に見られたまずいで……」
「もう少しだけこのままで……ね?」
アルスの方が圧倒的に身長が高いため、キルクが見上げるようにアルスへと顔を向ける。
う、上目づかい!?
無意識からのキルクの精神攻撃。
破壊力が……
そ、それに……
先ほどから胸に感じる、柔らかい二つの感触。
ま、まさか。な……
それから数秒も満たなかっただろう。キルクはゆっくりとアルスから離れ。
「い、今のは忘れてくれ!」
急ぎ足でその場を離れていく。
「……はぁ。危なかった」
キルクの背中が遠ざかっていくのを確認したアルスは、小さくため息をつく。
取り合えず、小さな危機は脱し……
ドキドキ。
「うん?」
何かを感じたアルスは自身の胸に手を置く。
心拍が以上に高い。何故俺がドキドキしているんだ。相手は男だぞ……
ムニ……
男……
ムニムニ……
先ほどの感触が頭から離れないアルス。
い、一回。この事は忘れよう!
アルスは頭を横に大きく振り、冷静さを取り戻す。
俺は……いや、私は誰だ! アルザニクス家次期当主、アルス・ゼン・アルザニクスだぞ。
「ふぅ。よし!」
こうして屋敷に帰ってきて早々、ハプニングに見舞われたアルスであったが気を取り直し、屋敷へと向かうのであった。
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