決着と一瞬の出来事 その2
「じゃあ、もうちょっと本気。見せないとね」
サリアナが意味深な言葉を吐いた瞬間。
ブワァー!
圧倒的な死のオーラを漂わせた圧が、サリアナからあふれ出す。
「な……」
言葉にならないエバン。
息が詰まる……
それは敵も同様で、皆、硬直したまま動けなくなっていた。
「ほら、言っただろ?」
ガイルは相手に同情した顔で言葉を漏らす。
「ああなったサリアナはもう止まらない」
サリアナはスッと顔に張り付いていた笑みを消し去り、不自然な程深く、腰を落とす。
「この技はまだ、両手で数えるぐらいしか使った事無いんだ」
そして、レイピアを持つ腕を引き、レイピアと目線が同じ高さになる。
この場にいる全員の視線がサリアナに集まる。
独特な体制でレイピアを向けるサリアナと、一向に構えを崩さない白銀の戦士。
……次の一瞬で決まる。
誰もがそう予感する中……
「いくよ?」
最後の予告がなされる。
無言のままの白銀の戦士。
サリアナは無言を肯定の意味として受け取り、レイピアを長年追求してきてやっと完成させた大技。
「頑張って生き残ってね……」
この技を受けて生き延びた者はまだいない、究極の一撃を白銀の戦士へと……
「……え?」
ぶつけた。
さ、サリアナ様が……ブレた?
エバンの目には一瞬、サリアナの像が3つに増えたかのように見えたのだが、気づいたら消えていた。
ど、何処に……
信じられないモノを見たかのようにその場を右に左にと視線を向けるエバン。
サリアナ様は……あ。
エバンの視線の先には、視界から消え去ったはずのサリアナ。
そんなサリアナをようやく発見したエバンはそこで、恐るべき光景を目の当たりにする。
「嘘だろ……」
誰かが呟く。
皆が注目する先には、至近距離で相対するサリアナと白銀の戦士の姿。
「グフッ……」
そして、膝をつきながら脇腹を抑える白銀の戦士と、勝者の様にその場に立ち尽くすサリアナの姿があった。
……サリアナ様の勝利だ!
二人の格好から、サリアナが勝者だと確信したエバンは恐る恐るサリアナへと足を進めようとしたその時。
「待て」
エバンを制止する、ガイルの声が響く。
「何かがおかしい」
「はい?」
サリアナ様は白銀の戦士に勝った。これの何がおかしいんだ?
エバンはガイルのいう事がさっぱり分からず。
「おかしいとは……一体?」
「あいつは……白銀の戦士は何故、サリアナと戦ったんだ?」
「サリアナ様と……ですか?」
ガイル様とサリアナ様、二人と戦闘するのが危険だからじゃないのか?
相手は20人近い数。しかし、騎士団隊長である二人相手にその数をぶつけても勝てる可能性は限りなく小さいと白銀の戦士は考えた。
エバンはこう、自分の中で結論付け、ガイルに話す。
「俺も最初はそう考えた。でも何かがおかしいんだ。良く考えてみろ、相手の目的はなんだ?」
「私達に勝つ事では……」
「それは過程であって、目的ではない。あいつらの目的……」
ガイルが考えを話す中、エバンの視界にある人物が映る。
……アルス様?
突如、寝ていたはずのアルスが起き上がる。
もう少し休んでおかれた方がいいのでは……
そして、ある地点へ顔を向けたアルスは顔色を変え、キルクを守るかのように押し倒しながら覆いかぶさる。
「あ、アルス様?」
その行動に驚きを隠せない様子のエバンに……
「それは……」
ガイルが一番重要な話の部分をしようとし……
「キルク王子の……」
途中まで言いかけた次の瞬間。
「ぐあっ……」
「あ、アルス……?」
視界の端にいたアルスが苦悶の表情を浮かべ。
「……は?」
予想外の出来事に思考が停止し、それと同時に……
「殺害だ」
ガイルが大事な事を話し終える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます