画面越しの君 その2

 お父様とお母様は……あ、いた。


 アルスは二人へ追いつき、目線を正面へ向けると、そこには今回の会場となる豪華な建物が立ちはだかっていた。



 あそこが会場の入り口か。


 貴族であろう者が数名並ぶ列にガイルとサラの二人が並んでおり、アルスも二人へ続くように後ろへと並ぶ。



 意外と会場の外には貴族は少ないんだな。もう中にいるのかな?


 所々に従者らしき人物や、騎士団の兵と思われる者が警備にあたっているが、貴族と思われる者達は列に並んでいた人以外、見られなかった。



 おっ、もうすぐ俺達の番だ。


 アルス達の前にいた貴族が会場の中へと消えていく。


 こうして、アルスがキョロキョロと周りを観察している間にも、列の先頭がアルス達になり、建物の中へと入場するのかと思ったその時。


「止まってください」


 王国騎士団1番隊、副隊長を示す紋章を胸に付けた人が警備の為、一人一人の名前を確認しており、アルス達も例外なく止められる。


「家名と食事会に参加する人数を「なんだ、ヘリオンじゃないか」……え? ガイルさんですか?」


 ガイルとその人物は親しそうに会話を始める。



 お父様の知り合いか? 


 アルスはその二人を交互に見て、二人共騎士団の一員なんだから知り合いにもなるかと自身で納得する。


 ガイルは会話中、ふと何かを思い出したかのように。


「そう言えばサリアナの姿が見られないが……あいつはもう中か?」


 人の名前を口にする。



 王国騎士団1番隊、副隊長はヘリオンさん。サリアナって名は……


「いえ、隊長は食事会には出たくないと無理言って守備隊の総指揮官を任されたのですが……」


 するとガイルは何かを察したかのように。


「まさか……何処かへほっつき歩いているのか?」


 ヘリオンは無言で頷く。


「全くあいつは……」


 するとガイルは手を額に当て、あきれ果てた様子でため息を吐く。


「私がしっかりとしていないばかりに……」


「いや、ヘリオンのせいではない」



 そうだった。サリアナって言ったら王国騎士団1番隊、隊長の名前じゃないか。



 王国騎士団1番隊。騎士団の中で一番の人気がある部隊。しかも、隊員も優秀な者が多く、エリート揃いの隊とも言われている。


 その中でも、圧倒的な実力を誇る、エリート中のエリート。1番隊、隊長。



『サリアナ・ジュ・フォルゼン』


 その実力はお父様をも凌ぐと言われており、王国一の女傑としても名高い人物である。




 うわー。本人に会いたかった。


 全女性の羨望の的であるサリアナは騎士団の名に恥じない、紳士的な対応を取る事で有名だが、その実態は自由奔放で男勝り。そして、本能のままに好き勝手するといういい加減な隊長でもある。



「わかった。あいつを見かけたらお前の所に戻るよう、伝えておこう」


「ありがとうございます。助かります」


 ガイルは短く会話をするとヘリオンに最後に何か耳打ちされ、一瞬驚いた表情を見せるがすぐ戻し、小さく頷くと。


「開けて差し上げろ」


 部下であろう兵士にヘリオンは扉を開けるよう指示をし、重厚な扉が口を開け、アルス達は会場の建物へ入って行ったのだった。

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