王都裏オークション メインステージ後編 その3
ミネルヴァ達が首飾りに対して意見を述べる中、アルスは突然……札にペンを走らせ、それを頭上に上げた。
『っ! な、なんと、聖金貨10枚が提示されました!』
「アルス様!?」「何してるんだい!?」「……」
アルスの行動にエバン達が驚きを見せる。
「あの品は歴史的価値は高いですがアルス様が考えるような、性能がいい品ではないと思うのですが……大丈夫なのですか?」
エバンが心配してか、アルスに忠告する。
「大丈夫だよエバン。あれは今後使う時が来る」
「そう言うってことは何かしらの効果を持ってるってことかい?」
ミネルヴァは何かを感じ取ったらしく、質問する。
「もちろん。あれはアーサー家の秘宝の一つで、真実の首飾りという物です」
あれはアーサー家が保有していた5つの秘宝の一つ。真実の首飾り。
アーサー家と言えば旧帝国の貴族の中で一番の力と権力を誇っていたとして有名だが、それほどまでの力を保有できていた理由はアーサー家の血筋もそうだが、もう一つはアーサー家が所有していた5つの秘宝のお陰だったりもする。その5つの秘宝のお陰で軍事や政治共に大躍進をみせてきたアーサー家だったが、現在のアーサー家は以前までの力は無い。
その原因が5つの秘宝の内、3つを紛失してしまった事だ。その為、現当主は血眼になって失われた秘宝を探し、あちこちの地域へアーサー家の子供達を旅に出させているとゲームの説明でされていたがこんな場所で出会えるとは……
アルスの顔に笑みが浮かぶ。
「アルス……嬉しそう」
そんなアルスをじっと見ていたニーナが変化に気づく。
「そりゃ嬉しいよ、だってあの秘宝があるか無いかでこの先の進み方が全然違うからね」
『これ以上の値を付ける方はいなさそうですね……。では、この金額で確定したいと思います!』
司会者が周りを見渡し、これ以上はいないと見切りをつけ、落札を締め切る。
「よし! ゲットできた!」
すんなり落札を決めたアルスは嬉しさで椅子から飛び上り、ガッツポーズを繰り出す。
それからアルスは興奮が冷めきらないうちに席を立ち。
「これで終わりか。それじゃあ、早く真実の首飾りを取りに行って帰ろうか」
真実の首飾りを受け取りにカウンターへ行き、無事聖金貨10枚で交換する。
「これが真実の首飾りですか」
「ちょっと気味が悪いね」
「気持ち悪い……」
それぞれの反応を見せるエバンたち。
「確かに見た目は良くないけど、効果を聞いたら驚くよ」
アルスはワクワクした様子で鑑定指輪を付ける。
「早く鑑定指輪で鑑定してみな」
ミネルヴァがアルスを急かす。
「分かってます。いきますよ」
アルスは右手に鑑定指輪を嵌め終えると、息を呑んだ様子で真実の首飾りへと手を触れる。
名前:真実の首飾り
説明:アーサー家一代目当主が強大な存在と契約した際に得られた5つの秘宝の一つ。
効果:身に付けている間に限り、相手の嘘を見抜ける。
「よし! 本物だ!」
アルスは本物だという事を確認し、笑みを浮かべると、エバン達に真実の首飾りの効果を丁寧に説明する。
「なるほど。確かに凄い効果です」「なるほどね」「凄い……」
3人とも真実の首飾りの効果を分かってくれたようで良かった。
「これがあれば騙されることが格段に減る。だけど一つ、デメリットがあって、相手が本当だと信じ込んでると、真実の首飾りを使っても真実って表示されちゃうんだよね」
「それだと使いどころが難しくなりますね」
そう。
真実の首飾りは、相手が嘘を言っているかどうかを判別するだけであり、例えると、相手が1+1=3が正解だと思い込んでいたら、相手が答えを3と言っても、その答えは真実と表示されてしまうのだ。その為、使い所が難しい一品でもある。
でも、使いようによっては非常に強力な品だからここで手に入れられて良かった。
こうして、アルス達は真実の首飾りを手に入れ、オークション会場を後にするのであった。
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