王都裏オークションの準備 その2

 結構暗いな。


 周囲が真っ暗な中、光源を頼りに階段をゆっくりと降りていくアルス達。


 アルスがこの場に訪れるのは、転生してからは初。画面の前では明るさはいくらでも変えれたが、今は現実。唯一光源を持つ、エバンの背にピッタリとくっつき、明るさを確保する他ない。



 そういえばニーナは大丈夫かな? 結構怖がりだし、暗いところは苦手なんじゃ……


「ニーナ大丈夫?」


 アルスは後ろにいるであろうニーナを心配し、声をかける。


「怖い……」


 声の震えから、ニーナが怖がっていることが分かる。


「大丈夫。前には俺がいるし、後ろにはミネルヴァさんがいるから」


「後ろは任せな」


「うん……」


 ニーナが涙目でアルスの洋服の端を掴みながら階段を降りること数分。



「あっ! 明かりが見えます!」


 エバンが階段を下りた先に見える、小さな光が差し込んでいる場所を発見する。


「ニーナ、あとちょっとだ」


 アルス達は、光差し込む扉の前まで足を進める。


「扉……、ですね。開けてもいいですか?」


「あぁ、開けてくれ」


 エバンがアルスに確認を取ると、光が差し込んでいる扉を勢いよく開ける。


「うわっ」


「うっ、まぶしい……」


 先程までの暗さと打って代わり、まばゆい光に包まれるアルス達。


 そんな眩しさから目を守るように手で視界を覆っていたアルスだったが。



 慣れてきた……、一回手を退けてみて……


「どれ……わぁ……」


 目の前の光景に言葉が出ない。



 やっぱり、画面の前で見ていた時と今とでは、感じる情報量が全然違う。ここでこの光景を見ているだけでも数時間は時間をつぶせるほどに……


 そんなアルスの目の前には数々の店が軒を連ね、地下に店があるという事もあり、灯籠や蝋燭。中には魔具といったような物で周囲が明るく照らされていた。そして、品を物色する客や値切りをする者など様々な人達で賑わいを見せていた。


 アルスは皆はどの様な反応をしているのだろうと気になり、背後へと振り向く。


 するとそこには……


「これは驚いたね」


「こんな施設が広がっていたなんて……」


「凄い……」


 三者三様の反応。


 ニーナなんて先程まで涙目になっていたのに、この地下に広がっている光景を目の当たりにした瞬間、自然と涙が引っ込んでしまっているようであった。




 そんなこの場所は王都裏オークションの会場であり、広大な地下施設。そして資産家たちが数年をかけて造らせたとされている無法地帯でもある。また、小さな街一つ分はあるのではないかと噂されるほど、大きく、普通の市場に流れない様なレアな品もあるため、貴族から市民まで、数多くの人達が毎年参加している。



「王都の大通りよりも活気があるんじゃないかい?」


 ミネルヴァは出品者と購入者のやり取りや、かけ声などからそう話す。


「そうかもしれませんね」


 アルスは皆の注目が会場にそれている事を感じ取り……


「よし皆! ここからは時間との勝負だ。昨日見せた欲しい物リスト覚えてるよね? そのリストに載っていた物があったら教えて。俺が確認するから。じゃあ行こうか!」


 手で大きな音をたて、皆の注目を引く。そして興奮を隠せない様子で、口早に声をかけると。


「あ、アルス様!」


「もう、行動が早いんだから……」


「うん」


 3人はそれぞれ返事をすると、アルス達は人混みの中に姿を消した。





 ~2時間後~


「人は多いし、一つ一つ品を見て回っていたらキリがないね」


「そうですね……」


 アルス達は広大な会場に翻弄され、あれから何一つ成果が得られていなかった。


「二手に分かれた方がいいのではないでしょうか?」


 エバンが提案する。


「それは駄目だ。ここは広すぎるし、あとで合流するのが大変になる」


 が、アルスは首を横に振り、却下する。


「じゃあ、こういうのはどうだい?」


「いえ、こうすれば……」


 すると、エバンとミネルヴァが色々と提案をし、これからどうするかを討論している中。



 なんか向こうにいいのが売ってる気がする……


 アルスは何かを感じたのか、一人で行動を始めてしまったのであった。

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