アルスの真実 その2

『ミネルヴァは戦いの中でしか生きていけない、か弱い女の子です。これまで幾度となく、戦場へと身を置き、大事なモノを一つずつ失ってきました。ですが……、貴方様なら』



 あの時は全然理解が出来なかったが、今なら少し分かった気がする。


「分かりました……。俺がミネルヴァさんを上手く扱って見せます!」


 アルスは大きく胸を叩き、宣言する。


「そうでなくちゃ」


 ミネルヴァは花を咲かせた様な惚れ惚れとする笑顔を見せる。


 

 うわっ……、綺麗。


 そんな何気ないミネルヴァの笑顔に心奪われていると。


 

 うん?

 

 アルスの洋服が後ろから引っ張られる。


 その事に気が付いたアルスは不思議そうに後ろを振り向くと。


「アルス……」


「どうしたの?」


 ニーナ? 


 何か思いつめた顔をしている。


「私は……今は何もできないけど。アルスのためなら弓の練習だって……」



 明らかに無理をしている表情だ。

 

「ニーナ、言っただろう? 辛いことはやんなくてもいい。それ以外で出来ることが人には必ずある。だから、それを俺たちと探していこう」


 今度はアルスがニーナの頭に手を乗せて撫でる。


「うん。私、頑張るから……」


 ニーナも目尻に涙を溜めながら、アルスの手に自分の手を合わせる。



「それでアルス様。次の行動方針は何ですか?」


 エバンが頃合いを見計らって、アルスに声をかける。


「そうだった。本当は今すぐにでも領地に帰って薬草づくりを始めたいんだが、俺達だけで帰る訳にもいかない。だから明日の王都最大の裏オークションに参加して、掘り出し物をゲットしたいと思う」



 それに貴族の集まりもあるからな……


 これまでは年齢が理由で参加してきていなかったアルスだったが、今年でちょうど10歳になり、参加できる年齢に達してしまった。するとサラに、今年だけは集まりに参加しなさいと面と向かって言われてしまったため、拒否できそうにもなかったのだった。



 もうすでに憂鬱だ……


「はぁ……」


 アルスはため息を零しながら、皆の前に手書きの紙を広げる。


「これは何だい?」


 ミネルヴァが他の二人も思ったであろう疑問を抱く。


「あぁ、これは欲しい物リストですね。そのアイテムの効果や特徴。形や色などを覚えている範囲ですがこの紙に書き出しました」


 アルスは何枚もの紙を並べながら答える。


「こ……、こんなにあるのかい?」


 アルス以外の3人は困惑した様子で紙を手に取り、確認していく。


「この他にも色々なアイテムがあるんですが、それらも書き出すと膨大な量になってしまうので、本当に必要なモノピックアップして書き出しました。そして、今回メインで探していくのは……」

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