一握りの存在 その1
~2時間後~
「全然いい人がいないな……、この人で30人目だし」
アルスは鑑定眼鏡をかけて、鑑定を進めること2時間あまり。一目もそらさず、負けじとオークションに参加していたが、中々いい人材がおらず、すでに退屈し始めていた。
「アルス。時には待つことも大切だよ。慌てちゃ絶好のタイミングを逃すこともあるからね」
そんなミネルヴァは、3本目となるお酒の栓を空けながら話す。
「ミネルヴァさんはそんなことを言う前に、お酒を程々にしてください」
「大丈夫。3本ぐらいじゃ護衛に支障は出ないから安心しな」
「言い訳しないでください! 大体貴方は……」
またしても、エバンとミネルヴァが言い合っていると。
「おっ? おおっ! 中々に良さげな人が出てきたよ」
アルスは若干興奮気味に二人に伝える。
するとミネルヴァはけだるそうに体を持ち上げ、メインステージへと目をやる。
「どれどれ、あいつは……、なんか貧弱そうな男だね。私より弱そうだよ。まぁ、アルスがいいって言うんだ、何かしらの才能はあるんだろうね」
そりゃ、ミネルヴァさんよりは軟弱野郎だろう。ってか、この会場でミネルヴァさん以上の武力の持ち主はいないのではないだろうか。
アルスはミネルヴァへ苦笑いすると、もう一度メインステージ上の奴隷を見る。
さっき鑑定したら、弓術が75まで上がる事が分かったし、突破回数も2回ある。これは一回入札してみるか。
妥協点かなと考えたアルスは、ボードに大金貨2枚と記入し、掲げた。
『11番様が大金貨2枚です! 他には……、6番様が聖金貨1枚です!』
「聖金貨1枚!?」
思ったより大幅につり上げられた衝撃で、軽く驚く。
「うん? また6番かい? さっきから手当たり次第に購入札をあげてるけど、よほど金があるんだろうね」
ミネルヴァは上には上がいるもんだねと酒を煽りながら答える。
くっ、後少しなら……
アルスは新しくボードに金額を書き直し、再度掲げる。
『ここで、11番様が聖金貨1枚と大金貨2枚です! 他は……、またしても6番様が聖金貨2枚です!』
「はぁ!?」
上げすぎだろ! もう少しゆっくりつり上げればいいものの。
アルスは憤りを感じながらも、掲げたボードを下ろし、金額を再度書き直そうとしたその時。
「アルス様。少し頭に血が上りすぎではないですか?」
異変に気づいたエバンがアルスへと声をかける。
「別に大丈夫……」
「そうだよ。本当に聖金貨2枚以上の価値があるやつなんだろうね?」
アルスは二人に言われて、ハッとする。
そうだ。もう一度良く考えろ。あの人材は聖金貨2枚以上の価値があるかどうかを。
先程までの熱が一気に去っていくのを感じるアルス。
「ふー。……二人ともありがとう。おかげで熱が冷めたよ」
アルスは息を吐き、途中まで掲げていたボードを下げる。
『これ以上はいませんね? では、6番様が落札となります!』
アルスは諦めること選択し、聖金貨2枚で6番が落札することとなった。
~それから少しして~
「今度こそは! また6番!? また聖金貨2枚だって!?」
アルスが鑑定していいと思った人材が、次々と6番に落札されていく。
「次こそは……、またかよ! まさか俺、嫌がらせされてる?」
アルスはいい加減、6番との落札争いに嫌気が指してきた時。
『皆様! 長らくお待たせしました! 只今より、本日のラストイベントを行わさせていただきます!』
今日のオークションの目玉となる、ラストイベントに差しかかったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます