異世界でお仕事
唐傘人形
1章
第1話
俺は仕事が嫌いだ。
何をやっても続かず、職を転々とした。
不正と怠惰が満ち、そこから逃げたかったのだ。
だが何処へ行っても、不正は無くならない。
もう嫌だ……。
「うああぁぁっ!」
俺はどうやら寝ていたようだ。
毛布を跳ね飛ばして床に転がっているのがみえる。
「悪夢だ、転落するなんて縁起が悪い……」
時計を見ようと室内を見渡すが、見知らぬ場所だということに気づいた。
ガラスに反射する見知らぬ子供姿が目に入り振り返る。
この部屋には俺しか居ない。
てっ事は、俺の姿なのか……。
手を動かしたりして反射する姿が俺なのかを確かめた。
「なんでだ、また子供からやり直しなのか?」
扉をノックする音がして、美しい20前後の女性が部屋に入ってきた。
波打つ黄金の髪が煌めき、透き通るように白い肌、整った顔はまさに天使の様だった。
完全にど真ん中だった、子供姿でなかったら告白して居たかもしれない。
「ユウ君、大声を上げてどうしたの?」
「誰?」
「まだ寝ぼけているのね。
お母さんよ」
俺は全然、彼女のことは知らない。
よーく思い出せば、あの時頭から地面に激突したんだ。
つまり俺は死んで、転生したのかもしれない。
てっ、母親なのか……。
それに一目惚れするって、俺はどうなってるんだ。
枕を手に取り顔を隠しつつ答える。
「ごめん、とても怖い夢を見たんだ」
「まだゴブリンに襲われた時の夢を見るのね……。
ここは大丈夫だから安心して寝るのよ」
ゴブリン……?
なんのことか解らないがとりあえず話を合わせて頷くことにした。
次の日、朝日が顔を照らし眩しさで目を覚ました。
「うぅぅ眠い……、カーテンが無いから光が入ってくるのか」
窓の外をふと見ると、空を羽ばたく巨大な飛龍の姿が見えた。
なっ……、あれはゲームで見たワイバーンじゃないのか?
もしかしてゲームの世界に来た。
だとしたら俺は冒険者になって旅をするのか。
それとも勇者になって魔王を討伐……。
なんかワクワクしてきた。
趣味が仕事になるなんて最高すぎる。
徹夜確定のレベル上げするしか無いな。
トントン……。
扉をノックする音だ。
「ユウ君、起きなさい」
「はい、起きてます」
「今日は、10歳の誕生です。
もう大人として仕事を始めなくてはならないのです」
えっ……、10歳で大人なのか。
いやいや、ちょっと待って。
この世界のことをなんにも知らなくて、放り出されるとか無理ゲーじゃないか。
まさかのクソゲーなのか。
ありうる。
延々と拒否っても結局は"ハイ"を選ばされるんだ。
ここは素直に返事するのが無難だろうな。
「解りました。
俺は一人で生きていきます」
「ユウ君……、うううぅぅぅっ。
お母さんは寂しい……、ずっと側にいて欲しいと思っていたのに……」
「えっ?」
「でも、ユウ君がそう言うのなら。
応援するからね」
こうして独り立ちする事になった。
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