第8話オニババ・ケッチャク・クウフク
Sとの【血の盟約】を交わした瞬間
身体中に電流が走りにワシの身体を覆っていた殻のようなものがはじけて消え
血や肉のすべてから力が湧き出してくるような
糞坊主にやられた頃よりも強力な力が身のうちに渦巻くのを感じた。
あのノッポ女(口裂け女)が鋏をどこからか生み出した力の源と同じような物なのだろう。
実際に空を飛んだノッポ女に飛び移り、捕食することができた。
かみ砕いたノッポ女の頭蓋はとてもじゃないが美味いものではなかった。
糞坊主にやられるまではワシにとって最高のご馳走だったはずなのに
Sに食わされたラーメンの味に比べれば雲泥の差だ。
ワシの身体に吸い込まれた赤い光の粒を取り込んだ時の
充足感は心地良かったが…。
気が付くとワシはあのノッポ女の力を取り込んだようで
ぷかぷかと空中に浮かんでいた。
Sが待つ建物を見るとぽかんとワシの事を見つめていた。
あの阿呆も多少怪我はしたようだが大事はなかったらしい。
ホット胸を撫で下ろした瞬間、ボムん!
と身体から煙が出て、元の少女の身体に戻ってしまったワシは
空中に浮く力が無くなり地面に落下した。
__________
ガサガサドシン
と急に少女の姿にもどったイワテが地面に落下する姿を見た俺は
イワテの下へ向かった。
どうやら口裂け女に切り倒された街路樹の上に落下したらしく
木の葉や枝がクッションとなり怪我一つなかったのは幸いだった。
「あぁ、イワテちゃん助けてくれてありがとう」
と服をはだけさせたイワテを思わずハグしようとしたが
「近寄るな変態」
バチン
とはだけた和服を整えている顔を赤らめたイワテに思い切りほほを平手でひっぱたかれた。
思わず地面に背中を付けて寝転ぶ状態となってしまった。
口裂け女を捻りつぶしたあの怪力も今は消えているようで
俺の首はそのまま俺の身体とお別れすることはなかったが
緊張の糸が切れて足腰がふにゃふにゃになっていたらしい。
ごろりと地面に転がるとオレンジと真っ黒な世界が不透明度を上げるように消滅し
普段の町の景色が戻ってきた。
道路に車が走り、駅に向かって部活帰りの高校生や塾通いの中学生が歩いていく。
切り倒されて道をふさいでいた街路樹も元の位置に鎮座していた。
いそいそと服を整え終えたイワテの腹の虫がぐうとなった。
ラーメンセットと口裂け女を平らげたイワテの食欲は底を知らないのか?
と驚いていると
「どうやら力を使い果たしたらしい…」
俺は恥ずかしそうにしているイワテを
お礼に食事に誘うことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます