罪と償い

柊三冬

第1話

「申し訳ありませんでした」


俺は過ちを犯した。それも、絶対にあってはならない大きな過ちを。

雷鳴が轟き、稲妻がこの場を照らしだす。

これ以上ないほど美しい土下座をして、目の前に佇む者に問うてみる。仁王立ちをして腕を組み、眉をつり上げる様子は「不機嫌」そのものである。

答えは返ってこない。頭を下げたまま、もう一度口を開いた。


「この罪は許されるのでしょうか?」


「………………次は無いから……」


いつもの数倍低い声でそう告げると、俺の隣に置いてあった袋を取って立ち去った。

どうやら最悪の事態は免れたようだ。

顔を上げ、ふぅと一息ついて部屋にある机に目をやった。そこには急いで用意した償いの品を嬉々として食べる可愛い俺の妹の姿があった。今年で小2。ちなみに俺は大学生。

その姿を見て、思い出したかのように強い安堵が体を巡った。



───妹のプリンを食べるなんて、大罪以外のなにものでもないぜ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

罪と償い 柊三冬 @3huyu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ