第20話 森の外へと、出た。



     〇



 あの人間、死そのものの襲来以降、冒険者の襲撃がなくなった。

 恐らくなのだが、討伐されたと勘違いされているのかもしれない。

 絶好の機会だ。

 これを逃すことなどありえない。

 アルラウネの彼女の準備も完了している。


 森を抜ける日が来た。


 進むごとに、木々が開けていく。

 空が増えていく。

 時に狩りをし、時に休み、進むに進む。

 そして。


 森の外へと、出た。


 岩の上から見下ろす。

 もう、そこには森はなかった。

 草原。

 見渡す限りの、草原。

 風が吹いた。

 穏やかで、優し気な風だった。

 隣りのアルラウネの彼女を見る。

 涙を、流していた。

 その姿にどうしようもできなくて、ただ、ふと手を握った。

 彼女がこちらを見る。

 俺は、静かに頷いた。

 間違いなく、俺たちは生きて、森を抜けられた。

 命の危険は延々と続くものだろう。

 ただ、それでも。

 新たな場所の空気というものは、ずいぶんと、うまい。


 ここから俺たちの、俺の何かが変わっていくのだろう。


 そう思わざるを得なかった。

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