【打ち切り】俺はゴブリン

雨のモノカキ

ゴブリン異端

第一章 目覚め

第1話 心の底から、ああはなりたくない、と。



     〇



 自分には過去があると理解した。

 漠然ばくぜんとしすぎて明確ではなく、かつて別の生命として生きていたくらいの感覚。

 別に思い出さずとも生きていける程度のことだ。

 ただ、認識が異なるようにはなった。

 要は俺そのものは小鬼ゴブリンではあるが、その他大勢の小鬼ゴブリンとは大きく異なる価値観を持ってしまっていた。

 彼らの生き方は醜悪しゅうあくで、おぞましく、見るにえないと思え、そして自分がそれと同じ種族であることを酷く嫌悪してしまっている。


 心の底から、ああはなりたくない、と。


 ほとんどが下卑げびた笑みを浮かべて生き、強者にびて、弱者を舐め、他者の食事を奪い、残飯ざんぱんや死体を容赦ようしゃなく喰らい、たとえそれが命の恩人であろうが己の欲の為におとしめさえする、そんな生物。

 その癖、数は多く、下半身に正直であった。

 人や亜人からは嫌悪けんおされ、一応の同種である魔族からも良い顔されない生物。

 それが小鬼ゴブリンであった。


 せめて、俺は、俺だけは違うように生きたいと願い、群れから離れて生きることにした。


 ここからだ。


 ここから、始めていこう。

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