⚙〈新コロ〉と語る 📞
医師脳
第1話 コロナ№7
▼孫子の「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あやう)からず」は、主観的で一面的な判断を戒める言葉である。
戦の相手が(中国武漢発とされる)新型コロナウイルス感染症(CОVID-19)なれば中国古典〈孫子の兵法〉はことさら有効かもしれない。
「絶対負けない理論」とも言われているらしい。
▼国立感染症研究所ホームページを見ると…。
「2020年1月31日、国立感染症研究所ウイルス第三部で〈新型コロナウイルス〉の分離に成功しました。電子顕微鏡写真像では、粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できます」と報告されている。
▼写真の〈新型コロナウイルス〉を「ニコちゃんマークのようだ」というウイルス学者もいる。
じっと見ていたら、そのニコちゃんマークが笑顔で語り掛けてきた。
…と医師脳(いしあたま)は感じた。
「こんにちは! SARS-CоV-2です。日本語では〈新型コロナウイルス〉と言いますから〈新コロ〉とでも呼んでください」
▼妙になれなれしい奴だと思いながらも、笑顔につられて名前の由来を聞いてしまった。
「電子顕微鏡で見ると、周りに冠(コロナ)状のギザギザが付いた形をしているからで~。それから…」と、〈新コロ〉は〈新型〉と呼ばれる理由も語り始めた。
「もともと4種類だったコロナウイルスに、SARSコロナウイルス(2002年)とMERSコロナウイルス(2012年)が加わり6種類になったところへ、新たに7番手として現れたからだと思います」
▼調子が出てきた〈新コロ〉は、SARSとMERSの解説を続けた。
「SARSは(重症急性呼吸器症候群)と言う名のとおり、急性で重症な肺炎を引き起こしました。MERSは(中東呼吸器症候群)の意味で、(名前に重症とはついていませんが)致死率はSARSの三倍くらい高いのです。今でも中東では、ラクダに注意しろ!と言われているようですよ」
▼自分のことを棚に上げて、SARSとMERSを悪く言う〈新コロ〉に腹がたつ。
「無症状のうちに感染を広げておいて、〈時限爆弾〉みたいに肺炎を起こす〈新コロ〉の方がよっぽど悪質だと思うけどね!」とにらんでやった。
「そんなひどいこと言わないでよ。そもそも僕たちウイルスは、人類が誕生する何億年も前から地球にいたわけで~。人間の胎盤だって(コロナとは違うけど)ウイルスがいなければ作られなかったはずだし…。それを一方的に〈ウイルス撲滅〉とか言うのやめて欲しいんですけど…」と涙ながらに消えた。
▼何の情報も得られぬまま〈孫子の兵法〉は失敗に終わった。
孫子の「智者の慮は必ず利害に雑(まじ)う」は、物事を判断する際は(利と害の両面から)トータル思考すべきだと説く。
次回は、〈新コロ〉に気持ち良く昔話を語らせて、ウイルスが変異を繰り返しつつ何億年も生き続けた訳を探りたい。
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