インバウンド

@ut6tqtd

第1話:言わなきゃ

「あれって、宇宙人だったのかな……。そんなのいるわけないって、思ってたけど……」

 なんとか逃げ切った彼は、少しずつ落ち着きを取り戻し、先程の出来事を思い出す。理由はそのうち分かると思うが、彼のことを、ここからは"ちくわ"と呼ぶ。

 確かに、先に手を出したのは"ちくわ”の方だ。しかし、すぐさま相手の仲間が援護に駆け付け、よく分からない難しい言葉を発しながら、見たこともない武器を手に取り、明らかな殺意を持って"ちくわ"に攻撃を加えた。恐らく、地球上で初めての、人類と地球外知的生命体との邂逅であった。

 向こうの攻撃は当たってないし、相手はもう追ってこない。体長は"ちくわ”の半分にも満たなかったが、自分たちの他に「知性」を持った生き物を見るのは、彼にとって初めてだった。

 とにかく、近くにいる仲間にこのことを伝えようと、"ちくわ"は空に向かって声を上げた。先程遭遇した奴らに気付かれないよう、できるだけ声を抑えたつもりであったが、もともとその心配はなかった。

 "ちくわ"の発した呼び声は、周波数で言うと約40,000ヘルツ。人間の可聴領域を大きく超えているため、"ちくわ"を襲った奴らの耳には聴こえない。

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