白籠の
塔
プロローグ
「私の鳥を、捕まえてきて欲しいのです」
上品なドレスと同じ生成りの鳥籠を揺らしながら彼女は私に訴えた。
落ち着いた、けれど切実な声色だった。
「既に小鳥がいなくなってから6時間19分31秒がたっている」
時計頭さんはポケットから出した懐中時計を確認しながら言った。
「引き受けるなら早して頂きたい」
「そんな言い方はよしたまえ。時計卿」
街灯のガスランプさんが私をかばう。
「しかし悠長にもしてられん。‥‥白籠」
時計頭さんが鳥籠の彼女に声をかける。
すると彼女はそっとドレスの裾をめくった。
こ、これは‥‥!!
彼女の足は先端からうっすらと透けて、まるで硝子細工のようになっていた。
‥‥私の弟と同じ‥‥
昔、私の弟も名前が剥がれて体の一部がこんな風になった。
ただ、弟はその状態になった時意識もなくなっていたのだけれど。
「今ここにいる私は単なる鳥籠なのです。あなたがた一般頭の方には解りにくいかも知れませんが、あの鳥が私であり、あの鳥の名前こそ私の名前。お願いでございます。どうか逃げた私自身を、見つけ出して連れ帰ってくださいませ」
私の名前は
この街じゃちょっとは知られた名前捜索事務所の主任捜査員。
名前捜索とは何かって?
お答えしましょう!
いつからか、この街では人や物の名前が逃げて勝手に動きまわるようになってしまった。
名前がなくなると、この世との因果が薄れてやがて消えてしまう。
それを助けてくれるのが私と、我らが探偵長『七篠権兵衛』ってわけ!!
そんなナイスエキサイティングでクールな事務所に舞い込んだ、一本の電話。
探偵長は先日の事件で負傷中。
ネモさんは‥‥プッ‥‥ククッ‥‥こど‥‥い、いや、やむを得ず仮の姿のまま。
ここは私がやるっきゃない!!
見ててください探偵長!!愛しいあなたの為、この不肖アズサ役に立ってみせます!!
さあ!今日もカラフルでラブリーな一日がラテンのリズムで私を迎えに来たわ!!
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