第四回『近所迷惑です!大家家の皆さん!』感想文

◆タイトル

近所迷惑です!大家家の皆さん!


◆作者

紅琥珀主 @benikohakunushi 様


◆文字数

4,000文字


◆読了後に思ったこと

『これは世界が終わる前の一介の受験生のほのぼのファミリーストーリー』とキャッチにあり、概要に登場人物紹介があります。


 なので、これはこれから始まる物語のうちのエピソードなのかもしれない、と思わせながらも、ジャンルは「エッセイ・ノンフィクション」、タグに「ほぼノンフィクション」とうたっており、一体全体この一話完結のお話が、どういう立ち位置に属するものなのかがわかりません。


 これはどういうことなのか…。

 このちぐはぐさだけでなんだかちょっと笑えます(笑)


 内容は大家族の長男、一(はじめ)くんが、プライベートを犠牲にして妹たちの面倒をみる、というものですが、そこで出てくる彼の行動は細かく具体的に描写され、なるほど、これはノンフィクションだ…と生活とそのてんやわんやをのぞき見る話でした。


 世界が終わる前もきっとみんなこうして日常を送っているのだろうと思うと一気に切なくなりますよね。

 そうした作品は枚挙にいとまがありませんが、これを完全にノンフィクションと捉えると、思い浮かぶものがあります。


 大災害と、戦争です。


 もちろんこのお話の中にはそんな要素は出てきません。

 でも、日常が滅ぶ瞬間というのは、大災害や戦争をおいて、現実世界では今のところ存在しないのではないか、と思います。

 そんな風に考えると、キャッチコピーとノンフィクションというジャンルが、妙なリアリティを持ち始めるんですね。

 これは読者が勝手に想像しているだけですから、本当のところはわかりません。

 本文中にもそうしたエッセンスは出てきません。


 藤子不二雄のSF短編集に『ある日……』というのがあります。

「滅びはある日突然、伏線を張るまもなくやってくる」と映画を用いて青年が語る物語ですが、これと同じように考えると、「いつもと変わらぬ一日」をコミカルに描いた本作も、その背後に控える恐ろしい終わりを念頭に置くと、とても残酷な感じに思えてきます。


 短い作品というのはこういう仕掛けが面白いですよね。


 一つわからなかったのは、タイトルです。あんまり近所迷惑になっていないような…? 妹たちを起こすときに大声を上げるのが近所迷惑なんでしょうか。それはたしかにあったかも…。


 最後に、作者様の今後のご活躍をお祈りいたします。

 ありがとうございました。

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