事故

 オレとサキュバスは、側から見たらほぼ同

 棲だ。

 

 しかし、付き合っているわけではない。

 

 でも特に喧嘩もないしよく二人で買い物に

 行ったりもする。

 

 そして今日も二人でお買い物中。

 

「あー、これなんかいいんじゃん?」

「だねー」

 なんて話していたら、

「あー‼︎咲蓮さーん」

 と会社の同僚らしき人たちが話しかけてき

 た。

「あーどうも」

「えっ⁉︎何彼氏〜、イケメンだ〜、いいなー

 ぁ」

 なんて言われた。

「あー…あははぁ」

 なんて笑って誤魔化すオレたち。

 

 邪魔したら悪いからとその同僚たちは、気

 を利かせてすぐさま去っていった。

 

「わたしたち、普通にしてれば恋人…にみえ

 るんだよね。きっと…」

「あー、かもな」

 

 …

 

 黙り込むサキュバス。

 

「?どうした」

「あっ、なんでもないよ!さ、お買い物の続

 き!」

「あーだな。」

 

 買い物をしているとよく家族連れを見かけ

 る。

 

 それをジーっとみるサキュバス。

 

 ⁇子供好きなのかな?

 くらいでオレはあんまり気に留めなかった。

 

 

 そして、それからまた月日は流れた。

 

 いつものように二人で食事をしていたら、

 サキュバスが

「わたしは、なんで人間じゃないんだろ」

 って言い出した。

 

 …えと、なんて返すのが正解だろう。

 

 よくわからなかったけど、

「人間になりたいの?」

 と質問をしてしまった。

 

 するとサキュバスは、一瞬悲しい顔をした

 

 でも、すぐに

「まさかー、だって人間は空も飛べないんだ

 よ。」

 と笑った。

「でも…」

「あー、なんかわたしアイスたべたくなっち

 ゃった。ちょっとコンビニ行ってくる」

「ならオレも買いたいのあるから一緒に行っ

 てもいい?」

「うん」

 

 オレたちは、これからまさかのことが起こ

 るなんて予想もしていなかった。

 

 

 

 アイスも買いもうすぐ家に着くって時に、

 事故は起こった。

 

 後ろから飲酒運転の車がいきなり突っ込ん

 できた。

 

 オレはとっさにサキュバスをかばい

「飛べー」

 と叫んだ。

 サキュバスは、オレに押されて飛んだ。

 

 オレはもうダメだと確信して目をつぶった。

 

 

 ドカーン

 

 …あれ?

 オレどこも痛くない⁉︎

 なんで?

 

 あの距離からしてオレひかれたよな…?

 

 ん…?

 サキュバスは⁉︎

 

 あいつ飛んだよな⁉︎

 どこまで飛んだんだ?

 

 

 …まてよ。

 

 

 ぺしゃんこの車のしたからサキュバスの羽

 と耳としっぽだけが落ちていた。

 

 ミュン…

 

 まさかあいつオレを庇って死んだ⁉︎

 

「ミュンーーー‼︎」

 

 オレは大声で叫んだ。

 

 するとどこからともなく

「ほんとは、わたしハヤトくんと結婚したか

 った。人間になってハヤトくんと一緒にな

 りたかったよ。今まで、わたしのせいで彼

 女も作れずごめんなさい。ずっと好きでし

 た」

 と声がした。

 

「…ミュン」

 

 声と同時に羽も耳もしっぽも跡形もなく消

 えてしまった。

 

 続く。

 

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