第62話 悪役と待ち合わせ①
夏休み10日目。ついに夏休みらしいイベントがやってきた。
「みんなでプールだと!」
『うんっ。雄二くんもどうかなって』
夜。結斗から電話が掛かってきたと思えば、来週プールに行かないかというお話。
最近は、雲雀の監視付きで夏休みの宿題を終わらせていたから、こういう誘いは嬉しい……。夏休みの宿題も二度目はキツいのよ。
やはり夏休みに友達とプールに行くというのは醍醐味ではないか!!
『それで予定とか大丈夫? 行ける?』
「ああ、もちろん行くぜ!」
俺はもちろん即答。
その後、待ち合わせ場所、どんなメンバーで行くか、必要なお金のことなど説明してくれた。
結斗との電話が終わり、アイスコーヒーの一口飲む。……ダメだ、楽しみすぎてニヤける。
「雄二様、楽しそうですね」
「ああ、友達とプールなんて最高だっ」
「それは良かったですね」
あ〜、早く来週にならないかなぁ〜。
「…………」
◆
当日。集合場所は高校の最寄駅。
今日は電車を乗り継ぎ、遊園地の隣に併設してある、夏場だけオープンのプール施設にいく。なんでも最近リニューアルしたそうで、遊び場も豊富らしい。
「ちょっと早く来すぎちまったかなぁ」
駅の改札前に備え付けてあるベンチで、1人待つ。スマホの時刻を見ると、集合時間の30分前。
「まあ家にいてもソワソワして落ち着かないしな」
雲雀にも集合場所に行ってソワソワしてくださいって言われたし。
スマホゲームで時間を潰すとして、あと20分ぐらいは1人で待機——
「雄二くん!」
「おお、結斗!」
現れたのは、結斗。
髪は軽く外ハネしており、もう顔面からイケメン。
ダークブラウンのチェックの開襟シャツにブラックパンツ。うん、私服もイケメンだ。イケメンだよ、主人公。
俺なんか、ほんのりと肩が落ちる程度のセミオーバーサイズのトップスに、空色のジーパン。シンプルな私服である。
「僕たち、早く来ちゃったみたいだね」
「だな。ほら、隣座れよ」
「うんっ」
結斗が早めに来てくれたことで、スマホゲームで1人、時間を潰さなくて済んだ。
「雄二くんも楽しみで早く来たの?」
「実はそうなんだよ。もしかして結斗もか?」
「えへへ、うんっ。前日から待ちきれなかったよ」
その気持ち分かる。前日の夜とか、何度も私服とか持ち物とかチェックしたし。
「昔は家族とプールに来ることが多かったけど、今年からは雄二くんたちと……たくさん来たいなっ」
「おお、もちろんだ!」
俺も結斗たちと。そしてこれからどんどん友達作って平穏で楽しい高校生を送るんだ。
美人姉妹と馬乗りされて体力がなくなるまでやられるというバットエンドには気をつけて。
「プール楽しみだね」
「そうだな」
と……俺と結斗は今2人きりだが、これはチャンスかもしれない。
何がチャンスって? 無自覚な結斗に少しでも美人姉妹の好意を気づかせることだ。
プールに行くメンバーには、もちろん美人姉妹がいる。あの2人も気合が入っていることだろう。
そこに、結斗がいつも通りの無自覚っぷりを発動してしまうと……きっと俺が不満の吐口にされるに違いない……。
だから手始めに……一番気合を入れているであろう、水着のことから意識させる!
「結斗よ。プールといえば男がワクワクするイベントがあるだろう?」
さぁ、言うんだ。「……もしかして水着かな?」と少し恥ずかしながら言うんだ。
「ウォータスライダーだよねっ! 2人で一緒に滑るみたいだから、雄二くん一緒に滑ろうっ」
「ああ、もちろんだ。って、そうじゃなくてな! もっと他にもあるだろう?」
確かに、ウォータスライダーってワクワクするけど。
「屋台も楽しみだよね。かき氷やポテトフライ。それにフランクフルトも」
「おいおい、唐揚げ棒と焼きそばを忘れてるぜ」
「そうだね、さすが雄二くん! 屋台のいろんな種類を食べれるように、2人で半分こしながら食べようっ」
「いい考えだな! じゃなくて!!」
確かに、夏のプールにある屋台ってめっちゃワクワクするけど!
「あとは……やっぱり雄二くんたちと夏も遊べるってことかな、えへへ……」
「………」
無自覚というか……もういい奴過ぎて俺の負けだよ……。
「雄二くん?」
「あ、いや……ほら、プールといえば水着だろう?」
「そうだね。僕もちゃんと新しいの持ってきたよっ」
「俺もだ。でだ、俺たち男だけではなく、当然女子も水着を持ってくる」
「うん、そうだね。プールだもん」
「そう、プールなんだ。プールといえば、水着をみんな着る。それはもう気合が入ったなぁ」
「雄二くんもやっぱり気合が入ってるの?」
「俺? 俺は……まあ、ほどほどに」
そもそと雲雀に選んでもらったしなぁ。サメ柄のハーフパンツ。
「僕もちゃんと選んだよ。他のみんなも多分新品のだよね」
「だから、女の子の水着は特にちゃんと褒めること。そして意識すること」
「? 分かったよ」
絶対分かってないな。「似合ってる」の一言で終わりそう。
と、話しているうちに10分前になった。そろそろ他のメンバーも来るはず……
「ナンパはお断りなんだ。ごめんね」
「迷惑なんでさっさと帰ってくださ〜い」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。顔を覗かせて駅の前を見ると……。
「これはもしや……」
「あはは……まひろちゃんもりいなちゃんも毎回大変だね……」
男2人にナンパされている、まひろとりいながいた。
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