第41話 悪役は……勉強に苦戦する②
「ぐぬぬ……」
数学の授業が終わり、休み時間。
俺は……返された小テストを睨んでいた。
「……なぁ、笠島。なんかいつにも増して怖くね?」
「ああ……。人を殺しにいく前みたいだぜ……。ごくり……」
いや、そんなには殺伐としてねぇだろ……多分。
クラスの男達がヒソヒソ話しているのは置いといて……再び小テストのプリント、特に端の方に書かれている点数を何度も確認する。
「現実なのか、これは……」
「雄二くんどうかしたの? 顔が怖いよ?」
結斗が俺の席にきた。反射的にプリントを胸の中に隠す。
「手に持ってるのはさっき返された小テスト? もしかして……点数が悪かったとか?」
「あ、ああ……」
「……そっか。でも中間テストまであと2週間あるし、大丈夫だよ! 僕も今日はあまり点数取れなかったから仲間だね」
「結斗……」
励ましてくれるなんて優しいなぁ。
「ちなみに結斗は何点だったか聞いてもいいか?」
「僕は40点だったよ」
「…………」
「雄二くん?」
小テストは50点満点。40点は高得点だろ!!
「雄二くんは何点だったの?」
「マジで悪いから聞かないでくれ……」
「そうなの?」
いくら勉強してなかったからって、こんな低い点数……下手したらクラスで一番低い点数を見られる訳には……。
「——5点」
「なっ!?」
後ろから声がしたので振り向くと、りいなが立っていた。そして、後ろから覗かれたことで点数がバレてしまった。
「ふーん、5点……笠島は見た目通りの点数なんだね〜。ふふっ」
「鼻で笑うな! 余計惨めになるだろうが! 大体、りいなさんだってこっち側だろ!」
「人を見た目で決めつけないでくれるかな〜。私は、45点」
「なに!? ……結斗、本当なのか?」
「りいなちゃんは頭いいから、そのくらいの点数を取っていてもおかしくないよ」
「マジかよ……」
りいなって頭良かったんだっけ。ゲームはたまにスキップしていたから見逃していたかもしれん。
「ちゃんと勉強すれば、りいなは私よりも点数を取れると思うよ」
まひろもこちらにきた。
まひろに関しては小テストを返される時、クラスで唯一の満点とか言われていたから、もうね……。
「りいな。私と中間テスト、勝負するかい?」
「嫌だよ。私は通知表がオール5になる程度に勉強する派なんですー」
「僕も勉強頑張らないと。赤点取っちゃうと補習があるからね」
「つか、俺が一番頑張らないと……。ってことで結斗、頼む! 俺にテスト範囲の勉強を教えてくれ!!」
「もちろん。雄二くんの点数アップの力になれるなら」
「ありがとう!」
結斗が教えてくれるなら赤点回避は確実と言っていいだろう。
「日程はどうする? 来週か?」
「えっとね……」
「ちょっとちょっと! 私たちがゆいくんとテスト勉強するって先約だったんだけど〜」
「私は笠島くんもいれて4人で勉強でもいいよ。見たところ、笠島くんはかなりテスト勉強に苦戦しそうだし。教える人はもう1人いた方が良さそうだしね」
「うぐっ……」
まひろの言う通り……。結斗にも勉強があるし、付きっきりって訳にはいかないよな。
「みんなで勉強で決まりだね。りいなちゃんもそれでいい?」
「ゆいくんとお姉ちゃんが良いなら良いけど……。じゃあ場所は私が決めていい?」
「いいよ」
美人姉妹と結斗と勉強かぁ……。またイチャイチャしている3人を見ながらになりそうだが、赤点回避のためには仕方ないこと。
勉強場所はどこにするか。
りいなの言葉を待っていると……。
「あっ」
「ん?」
俺を見て、りいなが何やら思いついたような声を出した。そして、
「笠島の家で勉強会しようよ」
は、はい…………???
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