第9話

 朝。そこにロープはなかった。

 母は朝食だと、俺を起こした。

 いつも通りの朝。

 朝食を食べて、学校の支度をする。


 元気が無い? 確かにそうだ。彼女が一昨日死んだ。事実としてそれだけだ。であるなら、僕はそれをするのみ。


 常日頃、この悲しさを背負って生きていた。であれば、もう既にこの悲しさには慣れている。そう思い込む。惜しむ心は抱えたまま、昨日や明日の事だと思う。


 そうだ、皆の前ではいつも通りを演じなければ。そして弱い黄身を隠して空元気という殻に籠もるのだ。弱い自分を見せたならば、僕は殺されてしまう。無論、俺は殺される。


 朝の日差しが眩しいと思いながらも、僕はその、玄関の扉を開けた。


「おはようございます。勇斗君。ほら、学校に行きますよ」

 そう深雪が笑っている。

「だな。行こうか」

 そう、人の少ない空間に言った。


 その時、勇斗は深雪の違和感をすっかり忘れていた。彼女は、いつから玄関前で待っていたのだろうか? そして何故、家を出る時間を知っているのだろうか? 深雪は、最近現れた存在である。故に何故彼女が、生活周期を知っているか、疑問である。

 しかし、そんな事はどうでも良いのかもしれない。勇斗自身の中では、既に深雪は"君"の互換品になっていた。

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生きた心地のしない確率と夢 生焼け海鵜 @gazou_umiu

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