05 皇宮への突入








 無事に魔力が回復すると、智希の合図で光莉が魔法を発動する。


「『閃光弾(スタングレネード)』!!」


 光莉の放った魔法の弾丸から、強烈な閃光が放出された。


「くっ…視界が……!」


 《クイーン》や精霊たちは、一瞬にして視界を奪われる。

 イオ達や味方の精霊、ドラゴンは合図に合わせて魔法陣の『遮光』(“太陽と金星の蝕”の時にリオンが発動していた魔法陣魔法)を発動していたので、目がくらむことはなかった。


「光莉!いまだ!」

「『聖なる巨大鎌(ホーリーデスサイズ)』!!」


 閃光に怯んだ闇ドラゴンに、光莉が光魔法の攻撃を仕掛ける。


 《クイーン》が光莉に気を取られているうちに、智希は『隠密』『透過』の状態で『飛翔』し、光ドラゴンへ近付く。

 ドラゴンは常に帯電しているので容易には触れられない。『雷電耐性』があっても、強い電気の衝撃には耐えられない可能性もある。


「『捕縛・石巌(ストーンバインド)』!『転移』!」


 隙を見て、光ドラゴンを地属性で捕縛する。

 そして間髪入れず、絶縁体である石に触れながら光ドラゴンを連れ転移した。






 転移先は、帝都の南にある海の沖だった。


「クソッ、転移か!?」

「ギァアアッ!!」


 光ドラゴンの頭上にいる光の精霊は困惑した様子だが、光ドラゴンは落ち着いた様子で『捕縛』を破壊する。


「『雷電竜・高電圧(サンダードラゴン・ハイボルテージ)』!!」

「ギェェエエエ!!!!」

「うおぉ!あぶねぇ…」


 精霊の指示で発せられたドラゴンの攻撃を慌てて避ける。

 ドラゴンは畳みかけるように光属性の攻撃を仕掛けてくる。


「トモキ!

 …っと危ねぇ、こりゃいくらアースドラゴンでも当たったら気絶するぜ!?」


 追って飛翔してきたアースドラゴンとイオ、ノームにもその攻撃が当たりそうになる。

 作戦を伝えた際、智希が光ドラゴンを転移させたら東の海の沖まで来てほしいと頼んでいたのだ。智希はイオ達にも『雷電耐性』の魔法をかけ、動きを指示する。


「攻撃避けながら飛び回ってくれ、気を引き付けてくれるだけでいい!」

「簡単に言いやがって……!」

「『防壁』を張り続ける!イオはとにかく避けてくれ!」


 ノームがそう言って『防壁』を張った。イオはアースドラゴンを操作しサンダードラゴンの周囲を飛び回る。

 一応5属性の基本的な構図でいくと、土属性は光属性に強いはずだ。


 智希は再び『透過』で姿を消す。土魔法攻撃のタイミングを見計らう。

 サンダードラゴンが飛び回るアースドラゴンの姿を一瞬見失い混乱した瞬間を、智希は見逃さなかった。


「『『『足枷・イリジウム(イリジウムシャックルズ)』』』」

「な…!三重詠唱……!!」


 サンダードラゴンがちょうど目の前に飛んできたタイミングで、ようやく攻撃を仕掛けられた。光の精霊がたじろぐ。

 身体全体を覆う『捕縛』ではなく、『足枷』をすることで簡単には外せないようにした。


 更にこの世で最も重いと言われるイリジウム製の足枷を両脚に3つずつ装着したので、合計で10トン近い重さになっているはず。


「ギ、ギギッ……!」

「おい、飛べ!落ちるぞ!!」


 光の精霊は焦った様子で叫ぶが、サンダードラゴンは足枷の重みで自由を失っている。

 サンダードラゴンの体重は、見た目からしてせいぜい40~50トン程度だろう。身体の2割近い重りを身につけた状態で、普通に飛べるはずはない。


 サンダードラゴンは力を振り絞り、身体の周囲に電気を貯め込む。


(来たっ!)


 タイミングを見計らい、一気に魔力を放出できるようイメージする。

 サンダードラゴンが放電する様子が見えたので、


「『極大海水疱(ギガントオーシャンルーム)』!!!」


 海水で一気にサンダードラゴンの身体を包み込んだ。

 精霊とドラゴンが気付いた時には遅く、放電は止まらなかった。

 海水に包まれたまま放電したために自らの電気でドラゴンは気絶し、海に落ちていった。






 その頃光莉は、闇ドラゴンと《クイーン》を相手に戦っていた。

 『閃光弾』により目をくらました闇ドラゴンに光攻撃魔法を放ったが、既のところで闇ドラゴンは攻撃を躱した。

 しかし、その反動で頭上に乗っていた闇の精霊が振り落とされる。


「『捕縛・稲光(ライトニングバインド)』!」


 すかさず光莉が、光魔法の捕縛で闇の精霊を捕える。ウンディーネが『飛翔』しそのまま闇の精霊を連れて転移した。


「くそ!

 『妖精女王の巨大砲(エルフクイーン・ヘビーキャノン)』」

「『反射(リフレクション)』!」


 《クイーン》が攻撃を仕掛けてくる。自分たちの周囲に結界は張ってあるが、念のため光莉が攻撃を跳ね返す。


「『水連弾(ウォーターリボルバー)』!」

「『竜巻(トルネード)』!」

「『砂塵嵐(ダストストーム)』!」


 隙を見て“混和”しMP回復していたリオン、ライル、リイナも同時に反撃に出る。ドラゴンも合わせて攻撃を放つ。

 光ドラゴンや《クイーン》から放たれる攻撃を避けながら、光莉がさらに闇ドラゴンを狙う。


「『雷轟電撃(テリフィック・サンダーストーム)』!!」


 光魔法で激しい稲光を浴びせ、ようやく闇ドラゴンをノックアウトした。闇ドラゴンはそのまま、皇宮の外庭に落下する。








 光莉が闇ドラゴンを倒したのとほぼ同時に、光の精霊を捕縛し終えた智希が皇宮に戻ってきた。


(間に合った……!)


 気絶したサンダードラゴンと一緒に『転移』してきた智希は、闇ドラゴンと並べてサンダードラゴンを外庭に横たわらせた。


「ちっ……」


 《クイーン》は冷めた表情のまま、横たわる2体のドラゴンを見つめ舌打ちをした。

 智希は光莉が跨るポッポの傍まで『飛翔』した。光莉と智希は互いに目を合わせ、頷く。


「『妖精女王の連撃砲(エルフクイーンリボルバー)』!」


 《クイーン》は結界を狙って撃つ。元々脆くなっていた結界は、とうとう破られてしまう。


「『召喚・従魔』」


 更にクイーンは、自らの従魔らしきワイバーンを呼び寄せた。

 破られた結界の隙間から、クイーンは従魔と共に皇宮内へと入っていった。








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