【不定期連載】政信とちとせが行く! 地獄と天国の日本縦断鉄道旅
東権海
目指せ、日本最北端!
第1話 日本最北端へ その1
早朝の上総一ノ宮駅。
春休み真っ只中の朝6時に電車に乗る人は流石にそこまで多くないようだ。
そんな閑散とした改札の前で。
「へ?乗車券が2万円?」
「合ってるよ。だって乗っていく場所が場所だもの」
乗車券の値段を見て驚く女子と、それに淡々と返す俺。
言わずもがな、女子はちとせのことである。
今日は3月下旬の月曜日。
卒業式も無事終わり、来月から都内の大学に通うことが決まっている俺たち。
なぜそんな2人で早朝から高い切符を持って駅にいるのか。
事の発端は卒業式前に遡る。
無事合格が判明し、卒業旅行について話し合っていたある日。
ちとせが目を輝かせて持ってきたのは、1枚のチラシ。
「ねぇねぇ、見てコレ。青春だって!」
JRが毎年春・夏・冬に発売する、青春18きっぷのチラシだった。
「ああ、それか。…それ使って何するの?」
「何ってそりゃ旅行するんだよ?」
「それ使うんだと、結構過酷になるけどいいのか?それ、結構利用制限が厳しいんだよ?」
「別に?なんなら、新幹線だけ禁止にして日本縦断もしてみたいけど」
「じゃあ両方行くか。……現地観光は後回しでいいんだな?」
「うん。……行きたいところが出来たら、そこはまたいつか行けばいいでしょ?」
うちの彼女は超優秀である。
今後の旅行先の候補を出すこともできるというわけだ。
頭の良さに思わずびっくりである。
「じゃあ、こうしよう。電車の席が全部取れたら行く、1個でもダメなら行かない」
「それでいいね!じゃあ計画立てよっか?」
「行程はこっちで作っちゃうから当日のお楽しみね?ルールだけ決めよう」
で、そのときに決めたルールに基づき行程を作成し、全ての予約可能列車の予約を終わらせた。
そして決行日の今日というわけだ。
今日使用するのは全部で4枚。
乗車券と、後は特急券だ。
で、今渡したのは乗車券。
コレを見て驚いたというわけだ。
「なになに、区間が上総一ノ宮→稚内、18,260円!意外と高いような安いような?」
「青春18きっぷよりは高いぞ?」
「そうなの?じゃあこれ高すぎじゃないの?」
「逆だよ。青春18きっぷが安すぎるんだよ」
「ふーん。……で、今日中にたどり着けるの?」
「一応は、な」
「一応って……。まあいいや、早く乗ろうよ」
「先にグリーン券買うぞ?」
「あ、そうだった」
お互い自分のSuicaでグリーン券を購入する。
東京まで買うように伝え、買い終わったところで切符を改札機に投入し、ホームへ。
すでに列車は到着済み。
乗車するのは、上総一ノ宮駅始発、総武快速線直通の快速東京行き。
いよいよ、遠い遠い北海道までの旅が始まった。
上総一ノ宮駅を出て程なくして、列車は一気にスピードを上げる。
途中停車駅は、茂原、大網、土気、誉田、鎌取、蘇我、本千葉、千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、馬喰町、新日本橋、終点の東京となる。
決して多くない停車駅設定と、そこそこ真っ直ぐな外房線なせいか、列車はかなりのスピードで大爆走していく。
とはいえ、あまりにも見慣れた景色であるせいか、俺たちはもっぱらイチャイチャしてるだけ。
朝早く、人もあまりいないおかげである。
「そういえば政信」
「どした?」
「朝ごはんどうするの?」
「それは大丈夫。買うだけの余裕は用意してあるぞ」
「ならいいけどさ。…ごはん抜きだけは勘弁してね?」
「大丈夫だよ。……それより怖いのはお土産だけどな。全国各地で買ったやつを後輩たちに差し入れしてやりたいし」
「そうだね。……ふわぁ、なんか眠くなっちゃった」
「まあ朝早かったしな。幸い、こいつは終点まで乗るから寝てても大丈夫だし、寝るか」
グリーン車なので、終点に付けば車内清掃のため強制的に下車させられるから、そのときに起きれるのだ。
今日は朝の5時起きだったのもあり、心地よい列車の音を背景に、2人して深い眠りの底へと沈んでいくのだった。
結局。
「お客さ〜ん、終点ですよ〜」
「あれ、もう着いちゃったか」
「なんかあっという間だったね」
気づけば東京に到着しており、俺たちは2人揃って清掃員の方に起こされていた。
次に乗るのは東北新幹線。
ただ、その前に朝ごはんと昼ごはんの買い出しだ。
目指したのは、コンコースの途中にある、とある駅弁屋。
ここで2人揃って、悩みに悩んで時間に余裕があまりなくなるのだった。
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予告から随分時間が経ちましたが、投稿を開始します。
不定期更新になります。
本編はコチラ→https://kakuyomu.jp/works/16816927862212659203
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