第31話
「マイス! マジッククローゼット5棹追加!」
「わかりました! 納期はいつまでですか?」
「1週間以内が2棹、1ヵ月以内が3棹よ」
「余裕ありますね。希望する飾りとか、紋章つけなきゃいけないとかあります?」
「あるわ。紋入りが3棹、飾りの希望は5棹全てあるけど、そんなに複雑なものはないから、マイスなら出来ると思う。伯爵様には、こんなに希望があるなら納期はギリギリですけど頑張りますって伝えておいたわ」
アオイさん、策士だなぁ。僕はそういうやり取りは苦手だから、お任せしてる。おかげで、伯爵様から労いだと大量の魔道具作成の材料を貰うようになった。これでまたなんか作れって事ですよね。分かります。マジッククローゼットが落ち着いたら新しい物を作りますので少々お待ちくださいって言ってある。
最近は、マジッククローゼットばかり作っている。
ナビは作り方を魔道具協会に公表したから、作れる人がいっぱい増えた。冒険者ギルドは独占販売をしたかったみたいだけど、例の支部長の件があるから作り方を公表する事に反対しなかった。お詫びとか言って大量のナビの注文を出すんだもの。いくらダン親方が居ても作りきれないよ。それだけ需要があるなら、作れる人を増やそうって事になった。
それ以来、魔道具協会でナビの作り方講座を定期的に行っている。売れる商品だからと、みんなが習いに来るんだ。
僕以外の人が作ったナビが売れる度に僕にお金が入るようになった。ひとつ売れたら、銀貨5枚。僕の給与に近い金額が、見知らぬ誰かがナビを売ったら入ってくる……。怖い! 怖いよ! ダン親方も、アオイさんも当然だって言うけど、僕はどうしても申し訳ない気持ちになる。
だけど、僕がお金は要らないなんて言ったら、他の魔道具製作者の迷惑になるから、きっちりお金は受け取る事にした。だって他の人もこうやって便利な魔道具の作り方を公表して、利益を得ているって言うんだもの。ダン親方も、いっぱい作り方を売ってるらしい。ミクタのギルド長、ダン親方は客も少ないしお金はないだろって言ってたけど、親方だいぶお金持ってたよ。ほとんど魔道具の材料に消えてるだけでした。僕も、ついつい色々材料買っちゃうから似たようなものだけど、過去の貧乏の恐怖があるから収入の半分は貯金に回してる。
冒険者ギルドはナビの販売を独占出来なくなったから多少利益は減ったけど、ナビのレンタルでまだまだ儲かってるみたい。
ナビの箱も作り方を公表したんだけど、難しくて作れる人は少ない。僕が知ってるだけで10人くらい。こんなの3時間で作るなんておかしいって協会長に言われた。そんな事言われても……。
マジッククローゼットも作り方を公表したんだけど、伯爵様は僕が作った物しか買ってくれないし、高価だから販売相手は貴族になるので、商売にしてる人は少ない。材料も高いし、タンスの装飾は魔道具職人の仕事じゃないからね。
家具職人と組んで作れば良いとアオイさんが提案していたからそのうち他の人も作るんじゃないかな。僕もそろそろ別の物作りたいし、伯爵様から注文は少なるなるだろうって言われてるからそろそろ新商品を作りたい。
最近気がついたんだけど、僕は新しい物を作る時がいちばんワクワクするみたいです。
忙しくても、仕事は17時には終わるからゆっくりできる。みんなでご飯を食べながらアオイさん達の国の話を聞いていると、作りたい物がたくさん出てきているんだ。
ダン親方もたまに泊まりに来てくれて、お風呂にも入っていく。リタさんが来た事もあるよ。
だから、客間を増設しました。
母屋と離れに一部屋ずつ。ダン親方が泊まりにくるとついつい離れで徹夜で制作しちゃうから、次の日を強制的に休日にされてしまう。女性陣にいつも叱られます。その度に
「マイス、オメェ良いとこに雇って貰えたなぁ」
そう言って、ダン親方は泣くんだよね。僕の苦労を知ってるからなんだけど、本当に良い人だ。
まだまだマジックバックは改良中だけど、アオイさん達の冒険には持って行って貰ってる。マジッククローゼットとマジックバッグを連携させたから、冒険中のご飯は僕が作って送ってる。冒険中にあったかいご飯は嬉しいって喜んで貰えてます。お菓子作りも覚えたよ。アイスクリームはレナさんが大好きだからよくリクエストされる。
販売するマジッククローゼットは、まだ転移をつけてません。売るには色々問題あるから、しばらくは無理だそうで、協会長さんと、ダン親方と色々相談してます。
あの日、泣きながら街を出てアオイさんに会えた僕は本当に幸運だった。
おかげで、幸せな暮らしをしている。ダン親方にも再会できた。ミクタは、今までの人混みが嘘のように寂れ始め、人口も減っているらしい。でも、僕にはもうどうでも良い事だ。
「アオイさん! マジッククローゼットは1週間で全部作ります! だから、次は冷蔵庫と冷凍庫を商品化しましょう!」
僕は今日も、アオイさん達とものづくりをする。
気弱ドワーフと転生エルフの産業革命 編端みどり @Midori-novel
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