第16話

「ちょっと時間を貰えたら、出来ますよ」


もともとある機能を組み合わせて、ナビにつけるだけだからね。


「じゃあ、それつけて貰える? 1か月で出来る?」


「出来ますよ。材料があれば」


「今日の納品は中止ね! 締め切りまで1か月あるし、もしもっと時間が必要なら交渉して来るよ」


「それだけ凄い機能がつくなら、待って下さるでしょうしね」


「凄いね。あたしたち回帰機能なんて知らなかったよ!」


「僕もダン親方から教わるまで知りませんでした。便利な機能なんですが、売る事が出来なくなるから滅多につけないんですよ。売っても元の持ち主に戻ってしまうから場合によってはトラブルになりますし。魔道具を中古で買う場合は、回帰機能がないかチェックして下さいね。調べるのは簡単なので後でお伝えしますから。普通なら回帰の付いた魔道具なんて説明無しで売りませんけど、たまに悪質な店があるらしいので。今回みたいにレンタル専用にするなら、便利な機能なんで良いと思いますけど」


「あ、そっか! 気に入ったらそのまま購入とかは無理になるんだ!」


「そうですね。レンタル専用になります。困るなら付けませんよ?」


「うーん……10個だけつけて、後から足すとかも出来る?」


「それならもっと簡単です。後から追加も可能ですよ」


「よし! まずはお買い物だよ!」


何をするにも材料が足りないので予定通りみんなで買い物に行く事になった。久しぶりに街に行くなぁ。なんだか晴れやかな気持ちで楽しい。


「マイスのナビはホントに便利なの。街歩きが楽になったわ」


「そーそー、なんかあればすぐにみんなの居場所が分かるから別行動しやすいのがありがたいよね」


そんな話をしていたらロッドさんのお店に着いた。うわっ! めちゃくちゃ良いお店。素材の扱いが丁寧だと思ってたけど、品揃えもすごい。


「……凄く良いお店ですね」


思わず声が出て出てしまった。


「こんなに期間を空けずいらっしゃるのは珍しいですね。どうされました?」


美形なエルフの男性が現れた。この人がロッドさんか。落ち着いた雰囲気で、優しそうな人だ。


「ロッドさん、こんにちは」


「こんにちは、レナさん。何をお探しですか?」


「ごめん! あたし分かんない! マイスよろしく」


「初めまして、マイスと申します。ドワーフの職人です。回帰の魔道具作成に必要な材料を探しに来ました」


「店主のロッドです。よろしくお願いします。回帰とは珍しいですね。青蝶の羽も、鱗粉も揃っていますよ。ルビーもあります」


「ありがとうございます。今回は羽を使うので羽とルビーを20ずつ頂けますか?」


「かしこまりました。お待ちください」


出てきた羽は、形も揃っているし何より保存状態が素晴らしかった。


「こんなに丁寧に羽を保存されているなんて素晴らしいですね。ルビーも磨き終わってますし。もしかして、ご自分で採取されていますか?」


「分かりますか!? そうなんです! 冒険者に頼むと素材の扱いが雑なんで自分で行くんです!!! アオイさん達は比較的丁寧に扱って下さるので採取をご依頼させて頂く事もあるんですが、やっぱり自分で取りに行くのが確実ですからね。たまに店を閉めて取りに行くんですよ」


「護衛はいつも私達だよね」


「他の冒険者は気が短いんですよ!!! まだ採取が終わってないのに帰ろうとするし、素材が取れるのにモンスターを切り刻みますし!」


「ロッドさんに出来るだけ傷つけないで倒してって頼まれるとなかなか大変なんですよね」


「私は魔法の訓練になって良いけどね」


「頑張るけど、無理な時は全力攻撃して良いって言ってくれるから、ちょっと大変だけど問題ないわよね。報酬も良いし」


「皆さんのおかげで、品揃えが良くなりました」


アオイさん達がこんな良い店を見つけられたのは彼女達がお仕事を真面目に受けていたからなのかもしれないな。


「マイスさんは、目利きですね。素材を磨いていると気が付いたお客様は初めてです」


「磨いてくださったおかげで、とても早く仕事が出来ました。この品質で磨くとなると、かなり時間もかかるでしょう?」


「そうですね。ですがこの店はそんなにお客様は来ませんし、磨くのが好きなので問題ありませんよ」


「ロッドさんとこの素材って、そんなに良いの?」


「かなり良いですよ。普通は仕入れた素材でも使えない物が1割〜2割はありますけど、ロッドさんから仕入れた素材は、ひとつも無駄になっていません。全て最高品質です。ミクタにはこんな素晴らしい素材屋さんはありません」


「マイスさんはミクタのご出身なのですね。職人の街ご出身の方に評価頂けるとは。ありがとうございます」


「ここの素材は、通常の2割増しでも買う価値がありますよ!」


あまりに素晴らしい素材に興奮していた僕を見て、みなさんは若干呆れていた。


「こんなに目が輝いてるマイスを見るの、初めてだよ」


「ウム チョット コワイ」


キュビさんにまで、呆れられた。そんなぁ。

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