第13話
「さて、皆さんが帰って来た時に休めるように今日中にベッドを作ってしまおう」
3人の希望は聞いてるから、今日中にベッドくらいは作れるだろう。
アオイさんは、飾りが少なめなシンプルなベッド。
レナさんは、天蓋付きが良いらしい。
カナさんは、大きめの広いベッドが希望だ。
「部屋は結構広いからベッドは大きくても余裕だから、全員ゆっくり出来るように、大きめにしよう。あとは……女性の部屋って、ベッドとクローゼットと、机くらいで良いのかな?」
いや、家づくりした時の事を思い出すと、ドレッサーが要るかな。鏡……ガラスを作るなら炉も要るな。
「大工道具はあんまり無いんだよな。給料出たら道具を買いに行きたいな」
今までは食べるのがやっとだったけど、今は衣食住にお金はかからないから、給料は道具の購入に充てられる。これだけ色んな事をするなら、いろんな道具が必要だな。
道具を作るのも良いけど、それなら尚更、炉が欲しい。炉を作らせて貰えるか交渉してみよう。
「オマエ、ナニシテル」
ん……? 何か声がするな。アオイさん達、帰ってきたのかな?
「オマエ、ナニシテル キイタ コタエロ」
違う! 誰?!
僕の目の前には、可愛らしいキツネが居るだけの筈……。
「イイカゲン コタエロ キコエテナイノカ」
「……まさか、こちらのキツネさんが喋ったなんて事ないよね……?」
「キコエテル ナラ ハヤク コタエロ」
「わぁぁ……! ごめんなさい! ごめんなさい! 皆さんのベッドを作っていますぅ!」
「ベッド……ナンダ ソレハ」
「寝る場所ですっ!」
「フム ナラ ワレモ トモニ ネレル ヨウニシロ」
え?! このキツネさんのベッドも作るの?! でも目の前でツンとした顔してるキツネさんの尻尾はパタパタしてるし、期待してるよねこれ。
そういえば、アオイさんは動物と話せるって言ってたね。このキツネさん、いつも見るし実はアオイさんの右腕的な感じなのかな……?
「分かりました。何処で寝たいんですか? やっぱりアオイさんの部屋ですか?」
「ウム シカシ カナ ヤ レナ トモ ネタイゾ」
「え?! カナさんやレナさんとも寝たいの?!」
じゃあ、キツネさんのベッド3つ追加かぁ。
「トウゼンダ ハヤク ツクレ」
でも今日中に3人のベッドは作りたいし、1つならともかく3つも追加で作れないよ。そうだ! キツネさんのベッドならサイズは小さくて良いし、移動式にすれば1つ作れば良いかな。
「分かりました。移動できるベッドを作るので、身体の大きさに合う希望のサイズを教えて貰えますか?」
「ウム コノクライ ノ オトキサダ。ソナタハ シゴトガ ハヤク テイネイ ト キイテイル ヨイモノヲ ツクレ」
「分かりました! 頑張りますね」
まさかキツネさんから褒められるとは思わなかった。これって僕が居ないところでも、皆さんが僕を褒めてくれてるって事だよね。嬉しいなぁ。
よし、ゆっくり休めるベッドを作ろう。
「マイス! ただいま! ご飯遅くなってごめん! 今日は屋台で色々買って来たからね」
「おかえりなさい。アオイさん。レナさんとカナさんはまだですか?」
「カナは営業中。レナは今までお世話になった親方のお家で晩御飯をご馳走になってるよ。終わったら連絡が来るから、私が迎えに行く予定。マイスのナビのおかげで居場所も分かるし迎えに行けるから別行動しやすくて助かるよ。魔力もあんまり消費しないから転移魔法を気軽に使えるしね。特にレナは街中でひとりにできなかったから」
「ああ、方向音痴って言ってましたね」
「それだけじゃないんだけどね。ま、おかげで安全に別行動出来て助かるよ」
「役に立って良かったです。お家はベッドと、簡単な机は出来ましたから、寛ぐくらいは問題ないですよ」
「え?! 早くない?!」
「キツネさんのベッドもあったから、時間ギリギリまでかかってしまいました。残業はしてないですけど、休憩は忘れてましたね。あ、お昼はちゃんと食べました。美味しかったです。ありがとうございます」
「キツネ?!」
「はい、ベッド作れって言われたので。皆さんと寝たいそうなので、ベッドは移動式にしてありますよ」
「まさか……キュビちゃん?」
「アオイ、オカエリ」
「キツネさんは、キュビさんって言うんですね」
「ム……オトコ 二 キュビ ト ヨバレルノハ フマンダガ マイス ハ イイモノヲ ツクッテ クレタ カラ トクベツ二 キュビ ト ヨンデ イイゾ」
「そうですか。光栄です。キュビさんのご希望のベッドが出来て良かったです」
あれ? アオイさんが固まってるな。もしかして、キュビさんと僕が喋るのダメだった?
「マイス……なんでキュビちゃんの言葉が分かるの?」
「えっと、キュビさんと話せるのはおかしいのでしょうか?」
「うん、おかしい。なんでキュビちゃんの言葉が分かるの? 私以外は分からないのに」
「な、なんでですか? キュビさん」
「シラン ワレハ イツモ ヒト 二 ハナシカケル ダガ ハンノウ シタノハ アオイ ト マイス ダケダ」
「え?! カナさんとレナさんは?!」
「ふたりとも話せないわ」
「ナゼ ハナセルカ ワカラン」
「えぇ……、僕だって今日急に話しかけられたんだから分かりませんよ」
「もう! スキルとか分かれば良いのに!」
「スキルって何ですかっ?!」
「あ、ああ! 気にしないで! それよりマイスは他の動物とも話せるの?!」
どうだろう。キュビさんの声しか分かんなかったけど。そう伝えると、アオイさんがたくさんの動物を連れてきた。アオイさんが声をかけるだけで集まるからすごいね。
「みんな! マイスに話しかけて!」
「「「……」」」
「なにも聞こえません」
「そっか、キュビちゃんだけかぁ」
「ワレハ カシコイ カラナ」
キュビさん、尻尾パタパタして得意げですね。めっちゃ可愛いですね。
なんだか尻尾の動きがレナさんと似てるなぁ。
「ま、キュビちゃんと話せるだけで凄いよね」
「ウム マタ イイモノヲ ツクレ」
「作れるものは危険な物でなければ、なんでも作りますけど、キュビさんの欲しいものって何ですか?」
「ワレモ フロ ガ ホシイゾ」
「キュビちゃんお風呂入るの?! なら私たちと入ろうよ!」
「ウム」
「キュビちゃん用の小さいやつ作って!」
「分かりました。浴槽だけ魔法で作って貰えますか? 魔道具はストックがあるから、すぐセットできるので今やってしまいましょう。そしたら今日からキュビさんとお風呂に入れますよ」
「ホント?! 残業で悪いけど頼んで良い?」
「もちろんです」
「ヤッタ エライゾ マイス」
「あ、お迎え行かなきゃ! すぐ浴槽作るからあとはよろしくね!」
そう言って、アオイさんは嬉しそうに去って行った。
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