第12話

「マイスはあっという間に作っちゃうから材料が足りなくなるんだよね」


「だよね。ホントに良い人雇えたよね。最初は男かよって思ったけど」


「レナは男嫌いだもんね」


「……ま、ほら色々あったしさ。マイスは大丈夫。なんでだろうね」


「あのお人好しオーラのせいじゃない?」


「確かに、マイスさんは良い人ですよね」


「最初会った時は、すいませんしか言わなかったわよ。オドオドしてるし、身の上話をしたら泣き出すし。だけど、ドアを直し始めたら別人みたいになったのよ。だから、この人は本物の職人なんだって思ったの」


「それはあるよ。仕事してる時のマイスには話しかけられない感じする」


「素晴らしい職人さんですよね。お人柄も良いし、マイスさんとの出会いに感謝です」


「もうちょっと欲深くても良いと思うけどね」


「それよ! あれだけやってるのに給料が月に銀貨8枚って安過ぎない?」


「以前は2枚だったそうよ」


「少な過ぎません? ミクタの物価は分かりませんが、なんとか1ヶ月食事が出来るくらいしかないじゃありませんか」


「マイス、自炊とかしてなかったって言ってたもんね。キツキツじゃない?」


「手取りだから、ホントはもっとあったのかもね。道具のレンタル料金を取られてたらしいわよ。魔道具開発の道具は高いからレンタル料も高くて、最後の親方は給料を多めにくれてたのに手取りは変わらなかったって。それも、ギルド長の差し金だったみたいだけどね。最後に雇ってくれた親方は賄いで食べさせてくれてたらしいわ。だけどその前は、お腹空いてキツかったって言ってたから食べるのでやっとだったんじゃないかな」


「……ひっどいね」


「2年の見習い期間だけならなんとか耐えられますが、マイスさんはあれだけの技能をお持ちなのに……」


「だからね、ナビをしっかり売ってマイスにも儲けさせてあげよう。ナビの利益の4割はマイスに行くんだから」


「そっか、給料増やすって言ってもマイスは受け取らないもんね」


「そうなの、私も最初はもっといっぱいあげようと思ったんだけど、マイスの態度をみてるとあげすぎても引いちゃうかなって思って少なめにしたのよね」


「正解ですね。ロイヤリティなら契約通り渡せば受け取って頂けるでしょう」


「だね。リタ親方もマイスに会いたがってたし、今度は連れて来ようね」


「そうですね。今度はケーキを焼いて差し入れしましょう」


「だね! それに、ロッドさんとこで少しだけど材料買えて良かったね!」


「そうね、帰ったらマイスに預けましょう」


「次は冒険者ギルドですね。少し考えたんですけど、ナビの販売を冒険者ギルドに持ちかけませんか?」


「冒険者ギルドにナビの販売?」


「え? 冒険者ギルドって色んな道具とか魔道具とかも売ってるけどあくまでオマケだよね? あたし達が遺跡で手に入れたアイテムとか売ったりもするけどさ」


「マイスさんのナビは優秀です。最初は貴族などの上流階級に売る事を考えましたが、コネがないですし、何かと無茶を言われそうでしょう? ですが、冒険者ギルドなら既にそれなりな信頼を築いていますし、私たちはナビを卸すだけにして面倒な販売はお任せ出来ないかなと思いまして」


「なるほどね。利益はちょっと減るかもだけど、面倒はなさそうね」


「良いんじゃない? あたしも冒険者のお仕事の方が好きだし、街に住むのは嫌だもん」


「そうね。それなら転移でたまに受け渡しをするだけで済むかも。でも、ちゃんと売ってくれるかな? 高過ぎとか言われない?」


「そこは、交渉次第ですね」


「カナがそんな事言うって事は、何か作戦があるんでしょ?」


「そんなに大した事ではありませんが、冒険者ギルドで大量に購入しても元が取れそうなプランを提案しようと思っています」

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