第8話
休日になり、家の修理をする事になったんだけど……どの家もガタついている。基礎から直すのは難しい。相談した結果、今の家は動物達に譲って新しく建てる事になった。おいおい壊して新しく建て直したいそうだ。アオイさん達も家を作ろうとしていたらしく、資材はふんだんにあったから問題ない。まずは家の基礎を作る。アオイさんが土魔法を使えたので、基礎はすぐに出来た。魔法、便利だね。
「普通はどのくらいかかるもの?」
「地面の状態にもよりますけど、数日はかかりますね」
「そうなんだ。じゃあ魔法ってやっぱり凄いね。こんな使い方があるなんて、知らなかったわ」
「土魔法だけで家を作る事も可能ですよ」
「ホント?!」
「ええ、たまにいました。魔法を使って一瞬で家を建てる大工が。ただ、単調なものしか作れませんし、大抵は基礎や骨組みを魔法で作って残りは人の手で仕上げますね」
「そうなんだ! ね、ちょっと練習してきてもいいかな?」
「「いいよ!」」
「基礎はこれで良い?」
「せっかくだから大きなお屋敷にしようよ。私たちと、マイスが広々と住めるように。でっかい台所も欲しいな」
「いいね! じゃあ、これくらいの広さにしよっか」
アオイさんは魔法で、さっきの倍の基礎を作り上げた。
「え? ぼくも住むんですか?」
「そりゃそうでしょ。いつまでも隙間風が吹く小屋はつらいじゃん」
「作業部屋もあればよろしいのではありませんか?」
「いいね! じゃあ、これくらいの広さでどう? ここはマイスの作業場ね!」
基礎が増えたぁ!
新しい職場の福利厚生は、どこまで良くなるのでしょうか。しかも、こんな美人さんと一つ屋根の下で住むの?!
……緊張するし、喜びより不安が大きいよ! 小心者な僕は、余計な事して嫌われないよう気をつけようと心に誓った。
アオイさん達と話し合って、それぞれの個室、リビング、ダイニング、台所、お風呂、トイレ、僕の作業部屋を作る事になった。
「空き部屋もいくつか作ろうよ!」
「そうですね! 人が増えてもいいようにしましょう」
「水やお湯は、魔道具で出せますし、排水も魔道具で浄化すれば衛生的です。今ある材料で魔道具が作れますから、すぐ設置しますね」
「魔道具すごいね! 後で材料費は別途払うから使った材料は教えてね」
「今までは毎回アオイが水やお湯を出したり、排水やトイレを浄化してたりしたんだよ」
「あれ、地味に大変なのよね……」
「そうですよね。でも、やらないと衛生的に問題がありますし。アオイ、いつもありがとうごさいます」
そうか、若い女性だしその辺りは気になるよね。それなら……。
「お風呂とトイレを優先して作りましょうか。柱や骨組み、壁と屋根まで土魔法で作れば、お風呂とトイレくらいなら今日中に出来ますよ」
「やる! やり方教えて!」
「僕は魔法が使えないので、なんとなくしかお伝え出来ませんが……」
「それで充分だよ、どんな形にしたらいいか教えて。あと、強度とか」
「形や強度はちゃんとわかりますから、お任せ下さい」
それから基礎と骨組み、壁と屋根を土魔法で作って貰い、まずはトイレが欲しいと皆さんが言うので最初にトイレを作った。浄化の魔道具を付けたから、バッチリだと思ったのにレナさんが不満そうに呟いた。
「こっちのトイレは、和式なんだよね」
「わしき?」
「あたし洋式がいいなー。ね、無理かな? 洋式トイレ」
「ワガママ言わないで下さい。今までのトイレより良いでしょう?」
「あの、ようしきトイレってどんな物ですか? 教えて下されば作りますよ。他に要望があれば教えて下さい」
「ホント?! あとね、水洗がいい!」
「すいせん? どんな風にしたらいいですか?」
「できるの?」
「とりあえずどんなものか教えて下さい。言ったじゃないですか。アオイさん達の作りたいものは、可能な限り作るって。僕に皆さんの欲しい物がすぐイメージ出来ないのは情けないですけど、教えて頂ければ作れるかどうか判断できますから」
「ホント?! 嬉しい! マイス大好き!」
ひぇえ! レナさんが抱きついてきたよ?!
ふわふわした耳と尻尾が柔らかいよ?!
「こら! 抱きつかない!」
アオイさんに回収されたレナさんは、尻尾をくるくる動かしている。
「……むぅ、ごめんなさーい」
レナさんの耳が、ペタンと閉じる。
獣人さんって、耳や尻尾で感情を表現するって聞くもんね。レナさんは分かりやすいなあ。
よし、どうにか皆さんが希望するトイレを作ってみよう。
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