第7話

「よし、できた」


就業時間を少し過ぎてしまったけど、完成した。


「マイス! 休めって言った……」


「アオイさん! 見てください! 出来ました!」


ようやく、出来た。これは自信作だ。


「え……早くない?」


「ちゃんと就業時間内で完成させましたよ。今日だけは、ちょっと過ぎましたけど。きちんと休むと効率良いって本当なんですね。いつもより集中できました」


そう言って、魔道具を見せる。もともと僕が作ってたのは地図みたいな形だったんだけど、女性が地図を広げてたらすぐ道を教えてあげるって話しかけられるから、携帯しやすいようにペンダント型にした。


ペンダントに触れて行き先を登録したら、ペンダントに触れた人だけ矢印が見えて行き先を教えてくれる。だからパーティーでひとつあれば良いんだけど離れる事もあるから全員分作った。


街中の案内はもう出来てたから、街の外の場合は街道沿いに案内されるようにした。街道がないところは、周囲1キロを調べて侵入可能な安全な道を探す。安全な道がない時は、警告を出す。


それから、パーティーで連絡が取れるようにペンダントの宝石をタッチして連携させれば通信可能とした。さっき追加したんだけど、通話の魔道具は何度も作ったから組み込むのは簡単だった。


居場所も同時に分かれば楽かなぁと思って足してみた。さっきお昼を食べてた時に思いついたんだ。この魔道具を連携させれば迷っていても分かるし、遠隔で道を教えてあげたりも出来るからね。


「3つ作りました。どうぞ」


あれ? 説明すると、3人ともポカーンとしてますけど。ペンダントのデザインが気に入らなかった?!

機能、足りなかった?!

周囲1キロは短すぎた? これ以上広げるならもうちょっと時間がかかるんだよね……。


「み、みなさん? デザイン気に入りませんでしたか?! 店によく来る女性冒険者が気に入りそうなデザインにしたんですけど、それとも……」


「「「そうじゃない」」」


「めちゃくちゃカワイイし、機能も凄いよ!」


「素晴らしいですね。使っているのが周囲に分からないのが嬉しいです。地図を広げるとすぐ変な人が寄ってくるので……」


やっぱりそうですよね。こんな美人さんが地図を広げてたら、道教えるよって男が寄ってきますよ。


「この連携機能が特にすごいわ! マイスを雇って大正解でしょう!」


「ええ、こんなに真面目で仕事のできる人を雇うなんてファインプレーです」


「ホントだよ! 私たちが作りたいものいっぱい作ってもらおう!」


「僕が出来るものは可能な限り作ります。どんなものが作りたいか、言ってください。明日は何を作りましょうか?」


「「「明日は休み!!!」」」


この3人、仲が良いなあ。


この後、魔道具の名前を決めた。名前は、みなさんが呼んでたナビって名前になった。可愛らしいし、聞いた事ないから良い名前だと思う。


材料や、作れる個数も聞かれたから本当に売るつもりらしい。売れるのかな? ドキドキするよ。


材料は、


魔鳥の羽

魔法水

少しの金

ゴーレムコアの欠片


だ。


「魔法水は出せるし、金と銀も買える。魔鳥の羽とゴーレムコアの欠片かぁ……ロッドさんのとこになかったら取ってくるね」


「やっぱり皆さんは冒険者なんですね。アオイさんなんてエルフだし、宮廷魔術師も狙えるのに」


「やーよ、めんどくさいわ。安心して、そこそこ稼いでるから給与の心配はいらないわよ。この辺の土地はちゃんと買ってあるしね。実は私、動物と話せるの。だからここを動物達の住処にしたいの」


動物の村かぁ。確かにここに来た時、いっぱい動物がいたもんな。みんなおとなしいし、癒されるから良いと思う。


「素晴らしいですね。ここが動物の村になるんですか」


「住人は4人、あとは動物ね。明日と、明後日はゆっくりしてね。どっか行きたいところある?」


「ナビの機能を試しに街に行くのも良いですけど……僕の分が無いですしね」


「それは休み明けにでも作ってよ。おやすみは仕事しなくて良いからさ」


「わかりました。でも2日も道具を触らないと腕が落ちます」


「じゃあ、作業するのは止めないわ。でも、お仕事はしないでよね。無理もしないでね。今後も休みはあるから、おやすみは好きな事をしましょ」


「好きなことですか……ものづくり以外は思いつかないですね」


なんだかんだで好きなんだよな。


「とりあえず、ゆっくり寝てみたら?」


グータラかぁ。それもいいなぁ。けど、ここに来てから睡眠はしっかり取れてるし、体調もすこぶる良い。休むだけは勿体無い。そうだ、ちょっと気になってる事があるんだよね。


「アオイさん、おうちの修理しませんか?」


「それはお仕事になっちゃうでしょ」


「いや、これは僕の趣味ですよ」


「むぅ……マイスは案外頑固よね。まぁいいわ。この小屋、私が呼び出したゴーレムで作ったから作りが雑なのよね。確かに気になってたし、私たちもやるから色々教えてくれる?」 


「ゴーレムが使えるなら、ゴーレムコア無いんですか?」


「働かせすぎて粉々」


どれだけ働かせてたんだろう?


「僕は見習いなのでうまく教えられるかは分からないですけど、色々やってみましょうか」


「マイスは一流の職人だよ。それは私が保証する」


見習い卒業の試験は受けられなかったけど、雇い主からは一流の職人という最高の褒め言葉を貰えた。

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