第47話 魔国で2


 アドロ国王がガッカリしているトムに。


「此処までは、此の世界の大まかな歴史みたいなものだが、最近の帝国はどうもおかしいのだ。以前は山脈の北側の小国を攻めて併合して北側全部を帝国の領土にして南側に手を出さなかったのに、1年前に突如現れたバンダイ・バイオスと言う人物が帝国の首席将軍についたのだ」


 トムもバースかから聞いてその人物を知っているので。


「その人物は我が国のそこにいる、バースから聞いて知っておりますが、普段は人間の姿をしていますが、本当の姿は、身長は2メータくらいで口は、大きく裂けて中は真っ赤で鋭い牙が生えていて肌は黒く背中にはカラスのような黒い羽根を持つ異様な姿の人物で、同じ姿の4人の配下を連れているらしいですね」


「知っていたのか、私も部下に調べさせたが、そいつは、元は人族でライガー王国の人間だが禁止されている闇魔法を研究して、人族や魔獣を改造していたのだ」


「えっ?人族や魔獣を改造出来るのですか?」


「どうやら、改造に成功したらしいのだ。自分も改造したみたいだ。そのうえ死霊も操れるようになったみたいでライガー王国のダビデ街とロラタ王都を死霊に襲わせたのもそいつだ」


 トムはあのドラゴンの死霊が死霊王の命令で自分はロラタ王都を襲ったと言っていたが、死霊王は悪霊を霊界に送るのが使命だとサリーから聞いていたのでどれが正しいのか分からなくなり聞いてみた。


「サリーから死霊王は悪霊を霊界に送るのが使命だと聞いたのですが、本当ですか?」


「本当だ、バンダイと言う化け物は死霊を操れるので自分を死霊王と名乗ったり、邪心王と言ったりしているのだ」


 アドロ国王の言葉で今までの疑問が解けたトムは今まで誰にも言わなかった事を打ち明ける事にした。


「アドロ様、今まで誤解されるので誰にも言わなかったのですが俺の称号に、死霊王があるのです」


「本当か! 素晴らしい! それなら邪心王を名乗っているバンダイを倒して霊界に送れるだろう。だが心配があるのだ。バンダイと配下の4人が1度死んで再生した死霊なら簡単に霊界に送れるが、もし、生きたまま死霊になっていればその時は殺さなければ霊界に送る事は難しいだろう」


「そうなのですか、戦ってみなければ分からないのですね」


「そういう事だがトム君なら大丈夫だろう」


 アドロ国王の話を聞いたトムは死霊王の能力を詳しく聞き死霊に対する対処法が分かったので魔国に来てよかったと思ったのだ。


 その晩にトムたちの歓迎会が大広間で開かれたのです。


 大広間に行くと大勢の魔族たちが集まりトムたちが入ると大きな拍手で歓迎して宴会が始まると1番人気があったのは、ジエルでジエルの周りには魔族の男性が群がり中にはトムの婚約者と知らずにプロポーズする魔人もいたのです。


 しかしながら歓迎会に出席している高位の魔人全員がトムたちを歓迎している訳では無く、反感を持っている者も少なからずいたのです。


 その筆頭はアドロ国王に次ぐ実力者で前国王の息子の通称サロことサロバリャンだ。


 此の世界の国王はエルフ族や人族のように血筋を大事にして国王の子供が後継者になる場合が多いが、獣人国と魔国は一番強い実力者が国王になるのです。


 魔国の場合は10年に1回、現国王に挑戦する大会が開かれて優勝者が国王に戦いを挑み勝てば国王が交代するのだ。


 アドロ国王は200年に渡って挑戦者を退けて国王の座にあるのです。


 サロは2回、連続で挑戦者になったが2回とアドロ国王に敗れたのだ。


 そのサロがトムに近づきトムを見下して。


「おい! お前は本当にバンドウ英雄様の子孫でエルフ国と獣人国、ドワーフ国を帝国から救ったのか」


 トムはいい加減バンドウの子孫と聞かれるのが嫌なので。


「俺はバンドウの子孫と言った事は無いよ、皆が勝手に言っているだけだよ、エルフ国などを助けたのは本当だがな」


「何だ、バンドウの子孫と言うのは嘘か、じゃー、3か国を帝国から救ったと言う事も嘘みたいだな」


 側にいたサリーが怒り。


「サロいい加減にしなさいよ、私も一緒にいたからトム様が3か国を救ったのは間違いないわ、疑うならトム様と戦ったらどうなの?」


 サリーの言葉に皆が驚いたのだ。

アドロ国王までもが興味を示して。


「トム君の実力を見せる良い機会だ。サロ、トム君と戦っても良いが勝つのは無理だろうがせめて傷の一つぐらいはつけて見なさい」


 サロがアドロ国王の言葉に怒って。


「傷どころか倒して見せるわ」


 と言い放ったがサリーが。


「トム様の実力も知らないのに可哀そうに・・・・・・・・」


 闘技場に着いて大勢の魔族たちが見守る中で戦いが始まるとトムが1分もかからずに居合抜きでサロの両腕を切り落として何事も無かったようにローランを呼び。


「ローラン、治癒魔法でサロの腕を元に戻してくれ」


 見ていた大勢の魔族たちはまさか魔国のアドロ国王に次ぐ実力者のサロを子供扱いしたトムを見て声も上げる事も出来ずにいたのだ。


 ローランの治癒魔法で両腕が元に戻ったサロが土下座して。


「無礼の数々申し訳ございませんでしたー! 是非俺をトム様の弟子にしてください」


 勿論トムは断ったのです。


 アドロ国王が。


「魔族は強い者に惹かれるが、娘のサリーがトム君に惚れるのも分かるわい、嫁にやるか・・・・・・」


 父親の複雑な親心を呟いたのでした。


 それから2日魔国に滞在したトムたちはフォーク国に戻ったのです。

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