第10話 ダビデ街で、その2


 トムが墓地に着き孤児院院長で兎獣人のお婆さん名前が刻まれた墓の前で手を合わせて、生きている事を報告して今までの礼を言い、墓を離れて来た道とは違う森の中に行ったので4人組も急いで森の中に入ったのだ。


 4人組はソンダイたち鷹の爪のパーティーで、狭い森にはトムとジエルの姿は無く辺りを探していると急に声がして。


「君たち誰を探しているのかな?久しぶりだね。相変わらず悪事をしているようだな」


 急に声と共に現れたトムに驚いたダイソンがほくそ笑んで。


「フン、何とでも言え。折角生き延びたのに残念だな、お前はこの墓地で又死ぬんだよ。馬鹿がノコノコ出て来やがって」


 トムは瞬間移動で木の上に登り4人のステータスを見ていたのだ、剣士のダイソンから聖剣使いのスキル、魔法使いのスブスから防御スキル、と何故か聖の魔法のスキルがあつたので、此れも移し獲り、槍使ガルシから槍使いのスキル、斧使いのカバラから斧使いのスキル、全員の魔力量の半分を移し獲り、4人全員が持っていた身体強化のスキルを移し獲っていたのです。


 ダイソンが剣を抜いて切り掛かろうとしたが、剣の重さにふらついて尻餅をついてしまい、他の3人も得意の魔法、斧、槍を使えず、まるで、子供のようで、小鳥から鳥人の姿になったバースがトムの横に降りて来て。


「トム様を殺そうとする輩はわしが許さん、トム様こいつらを殺しますか?」


 ジエルが本来の魔物姿で凍るような冷たい声で。


「トム様、この極悪人に毒液を掛けて溶かしましょうか?」


 ダイソンたち4人はジエルとバースの姿に驚愕して逃げようとしたが、スキルと魔力を移し獲られたので子供のような動きしか出来なく震えて。


【俺たちが悪かった。殺さないで許してくれー】


 泣き叫んでいたのだ。


 トムは最後に。


 「死ぬより辛い事があるのを知ると良い」


 と言い残して4人を置いて墓地を去ったのだ。


 残された4人は呆然としてトムの去って行く後ろ姿を見送り助かったと思い喜んでいたが、トムの言い残した【死ぬより辛い事がある】の意味を知ったのは半年後だったのである。



  帰り道にトムが鳥人のバースに。


「バース、あいつらが俺を殺そうとしているのを教えてくれてありがとう」


「ラガー様が千里眼で見ていて、「怪しい奴らがトム様を付けているから助けてこい」と言うので、来てみたらあいつらがトム様を殺す相談をしていたので報告しただけですから」


「それでも助かったよ、誘い出して誰にも見られずに懲らしめられたから」


 それでも気が収まらないのかジエルが。


「私の毒液で骨まで溶かせば証拠も残さないで殺せたのに」


「殺したら、あいつらは一瞬で死んで楽だろう。

それより生きて死ぬより辛い思いをして生きる方が罰になるさ」


 それから鷹の爪の4人はトムに魔力の半分とスキルを移し獲られているので魔獣と戦えず、依頼された仕事を全て失敗して冒険者の階級を下げられて最下級のE級になり薬草狩りも魔獣に会う危険があるので、生きる為に今まで馬鹿にしていた冒険者たちと立場が逆転して馬鹿にされながら街のドブ掃除や貴族の屋敷の掃除の依頼を受けて食いつないでいたのだ。


 誰が流した噂なのか寄って来た女性を犯していた悪事が知れ渡り、自分たちが逃げる為にトムをダンジョンで魔獣のエサにしたことも街の住民が知ると掃除の依頼も無くなり、何時しか4人は街から逃げ出したのか行方不明になり、その後は誰も4人の姿を見た者が無く、野垂れ死んだらしい。


 後で知ったが、4人は以前の勇者たちのグループの子供で遺伝子を受け継いで良いスキルを持っていたが、小さい時から甘やかされて我儘に育ったらしい。


 ジエルはトムが言った、死ぬよりも生きている方が辛いと言った意味が分かったのです。




 トムたちは深淵の森の反対側にある黒の森で凶悪な魔獣を倒して魔石を取りギルドで買い取って貰い旅に必要なお金を稼いでいたのです。


 そんなある日にトムは自分のステータスが気になり見て見ると。


  名前 トム

人族 男 18歳

称号 聖剣の使い手

レベル・・9(最大10)

生命力・・90(最大100)

魔力量・・限界突破(最大1,000)

スキル

移し獲る、(相手のスキルを奪い取り自分のものにする)

鑑定の目(物の特性、善悪、ステータスを見れる)

空間魔法、(瞬間移動、空間移転、無限収納、他)

火、水、風、土魔法、身体強化

言語翻訳

(全ての言語、理解、話す事が出来る)

聖魔法、防御魔法、隠蔽魔法



 今までなかった称号が聖剣使いになり、新しく、聖魔法、防御魔法、隠蔽魔法のスキルが増えてレベルと生命力が上がり、魔力量が限界突破していたのだ。


 トムは冒険者になりステータスがS級冒険者でもレベル7,魔力量70、スキルが多くて3と知っていたので自分のステータスを見てスキルの多さに驚き。


S級冒険者と戦っても勝てるレベルなので、もし王国に知られたら王国の戦士にさせられて他国との戦争に駆り出されて、戦いで敵の人間を殺す毎日なので新しく移し獲った隠蔽魔法でステータスを他人に見られないように隠したのです。


 最近いつも魔獣狩りに行っている黒の森は、深淵の森と比べたら広さは10分の1位と狭いが森の奥地に黒沼と呼ばれる何故か黒い水を湧き出す5km四方の沼があるのだ


 その沼から時々死霊の魔物が出る噂があるので冒険者たちは黒の森を避けて深淵の森に薬草採集や魔獣狩りに行くのです。


 トムたちにとっては、黒の森の方は冒険者たちが少なくB級以上の上級の冒険者だけなので、他人の目を気にせずに魔法を試せるから都合が良かったのだ。

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