第3話 ダンジョンの管理人、魔法使いのお婆さん


  どの位の時間が過ぎたのだろうか、気が付くとベッドに寝ていたのです。


「おや! 気が付いたかえー」


 声のする方を見るとそこには、黒ずくめの服を着て頭に赤い尖がり帽子を乗せたお婆さんがいたのだ。


 トムはベッドの上に起き上がりこのお婆さんが、助けてくれたのだと思い頭を下げて礼をしたのです。


 お婆さんが。


「ん?・・・・お前さんは耳が聞こえなく話す事も出来ないみたいじゃな」


 トムが頭を振って頷くとお婆さんは。


「千年ぶりに折角、人間に合えたのに話せないとは不便じゃのうー。どれ、婆が話せるように出来るか見てみよう。・・・・どうやら頭に障害があるようじゃ、動くなよ」


 お婆さんがトムの頭に手をかざすと、トムの身体が青白い温かい光に包まれてその光が消えたのです。


「どうじゃ、婆の声が聞こえるか?」


 

 トムにお婆さんの声が聞こえて、此の世界に来て初めて聞く人間の声に驚き感動して。


「き・・・・きこ・・・・え・・る」


「聞こえるが話せないようだな。う~ん。婆は鑑定の目を使えるのでお前さんのステータスを見せて貰うぞ」


名前 トム

人族 男 18歳

称号 ?????

レベル・・1(最大10)

生命力・・20(最大100)

魔力量・・20(最大1,000)

スキル

うつしとる。


 トムのステータスを見たお婆さんは。


「なんじゃ! これは、まるで小さな子供みたいじゃな。ん?・・・・スキルは【うつしとる】か?

初めて見るスキルじゃな」


「ご、ご・・ゴミ・・・・い、わ、れ、た」


「ふーん! ・・・・・・多分、鑑定した者は、“写し取る”と思ったのじゃろう。どうせ耳の聞こえないお前さんには使えないからゴミと言ったみたいだ。このスキルは、【移し獲る】で他人のスキルなどを奪い取って自分のスキルにする事が出来るスキルで最強のスキルじゃぞ」


  言われたトムは意味が分からず首を傾げていたが、お婆さんが。


「ヒヒヒヒ! 面白い! 婆の最後の仕事が出来そうじゃわい、ヒヒヒヒ~、トム、此れから1カ月間、婆が読み書きを教えて上級の魔法を使えるようにするから婆の訓練に耐えるのじゃ」


 「は、・・・・はい・・・・わか・・・・た」


  最初にお婆さんの書いた文字を【移し獲る】と文字と意味が分かるように様になり、お婆さんの言ったスキルの事が本当だったのだ。


 1週間はお婆さんから此の世界のあらゆる言葉を移し獲り自由に読み書きが出来るようになったのです。


 次の1週間はお婆さんに連れられてダンジョンの中に行き、魔獣や魔物と戦い魔獣の剛力のスキル、死霊の騎士と戦いお婆さんの助けで死ぬ手前で聖剣のスキルを移し獲ったのだ。


 面白い事に魔獣と魔物の言葉も移し獲る事が出来て動物の言葉さえ分かるようになってお婆さんが。


「ヒヒ、ヒヒ 何も話せなかったお前さんが動物とも話せるとは・・・・聞こえすぎて五月蠅いじゃろう?」


「いえ。滅茶苦茶、楽しいです。お婆さんのお蔭で感謝しています、ありがとうございました」


 次の1週間は魔法を習い魔法とは自然現象を正確に想像して使えばスキルにある色んな魔法を使えると教わり、魔物と魔獣から移し獲った、火、水、風、土の使い方を教えられたのだ。


 こうしてお婆さんに色んな事を教わり、魔物と魔獣からスキルを移し獲りトムは別人のように生まれ変わり。


何故お婆さんが自分に親切にしてくれるか不思議に思い、その晩に聞いたのです。


お婆さんの正体と理由はトムが思いもよらない事だったのである。




 その晩に食卓に着くと、何時の間に用意するのか、食卓にはいつもより豪華な食事とワインが用意されていたのです。


 ワインなど用意されていた事が無いので驚いているとお婆さんが。


「そろそろトムとお別れが来たようじゃ。最後にトムと過ごせて思い残す事は無いのじゃ」


「えっ?まだお礼もしてないし、分かれるのは嫌です」


「嬉しい事を言ってくれるのう~。じゃが、決まっておるのじゃ、これから婆の言う事を聞いてくれるか」


 そう言ってお婆さんが話した事は、お婆さんは此のダンジョンの管理者でダンジョンと管理者の寿命は千年で、寿命が来ると魔物と魔獣の管理が出来なくなり浅い階にもA級、S級の魔獣や魔物が出るようになり最悪の場合は、ダンジョンから出て街を襲うらしい。


 ダンジョンの寿命は明日までで、明日には崩れて無くなると言い、お婆さんの姿から若いドレス姿の大きな乳房が半分見える様なセクシーな20代の美しい女性に変わったのだ。


 トムは驚いて。


「ええええー! お、お婆さん! ど、どうしたの」


「驚いたかしら! フッフフ、これが私の若い時の姿なのよ」


 言葉使いまで若くなりまるで別人の胸の大きな女性なので、前世も含めて女性と付き合った事の無い童貞のトムは、目のやり場に困り、美しい女性は。



「私の生前の名はジョエルよ、寿命は明日までなの。私は悪女で貴族に生まれたのに男を漁って最後は娼婦になり、30歳で死んで気が付いたら魔女に生まれ変わり色んなスキルを与えられてダンジョンの管理者にされていたのよ。最後にこんな私だけれどトムに抱かれて死にたいの。嫌でしょうけれど抱いて私のスキルを全て移し獲ってミイラになった私を焼いて灰にして移し獲った移転魔法でダンジョンから脱出してね」


 何もない空間から腰に付ける黒いバックを取り出して。


「此れを記念に上げるわ、家が100軒くらいは入るマジックバックよ、私の形見だと思って大事にしてね」



 トムが聞こうとしていた事を聞かされて驚いていると、ジョエルが全裸の姿でベッドに横たわり手招きされて・・・・・・・・」


 何時間に及んだろうか? 果てては絡み合い、果てては絡み合い。


【ゴゴーゴウー】


と地鳴りが聞こえて来て、抱いていたジョエルは白骨化していたのだ。


 トムは起き上がるとダンジョンの崩壊が始まったので言われた通りにジョエルを焼いて灰にして最後に。


「ジョエル、今までありがとう。さようなら」


 ジョエルに別れを告げて移転魔法でダンジョンからダンジョンの外に移転したのだ。

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