第33話 東京での邂逅

出会ってすぐに分かった。本当に、石川さんだった。

10年前から、すっかり大人になった石川さん。

でも、顔も、声も、仕草も昔と変わらない。


僕はたちはカフェで話をする。

彼女が、生きていることは間違いない。

一体、どういうことなのか?


「君から連絡をもらうとは思わなかったよ」石川さんは言った。

「本物の石川さんだね」

「・・・うん。もちろん、本物だよ」

「僕はおかしいのかもしれない。僕には現実が分からない。なぜ、生きているの?」

彼女は、その質問に僕の目をじっと見つめてから答えた。

「君は、中学の時のことを、どう覚えているの?」

僕も、その瞳をじっと見る。


そして僕は、彼女の前で過去を思い出す。

始まりはいつだったか。

思い出せる限りの中学時代を石川さんに語っていく。


そこそこ長い話になった。

2、3時間ほどの時間が経っていただろう。

僕は彼女が死んで、目が覚めてから、心を閉ざして生きてきたことまでを話した。

石川さんは、真剣にじっと聞いていてくれた。


僕の話が終わると石川さんは言った。

「君は混乱しているんだね」

「そうだよ。わけが分からない」

「まず、君の記憶はところどころ間違っているよ」

「間違っている?」

「君は事故で2ヶ月間、意識がなかった。長期間、意識不明の状態になると、記憶が混乱したり、過去の事実を正しく思い出せなくなってしまうことがあるみたい」

彼女は、そこでカフェの外を見る。

「この話は、私以外にしたことがある?」

「いや、ないよ」

そうだ、わざわざ悲しい過去を誰かに話すわけがない。自分が耐えられない。

僕も彼女の視線を追って、外を見る。家族づれが通り過ぎていく。父親、母親、姉と弟。

「私に、弟はいない。そして犬も飼ったことはないよ」

「え? でも、会いにいった時に・・・」

「君は、心を閉ざして人と深く関わらなかった。だから誰も気づかなかったんだね。君の記憶は間違っているよ」

石川さんは、複雑な表情で僕を見て、優しく言った。

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