第25話 冬休みの雪遊び
そして、冬休みがやってくる。
約束通り、僕ら3人はうちのお店の駐車場で、雪遊びをする。
雪だるまやかまくらを作る予定が、なぜか最初は雪合戦になってしまった。
麻美がふざけて、僕に雪の球を投げたので、投げ返した。
麻美がもう一度投げ返してくる。そこに石川さんも麻美側で加勢してくる。
2対1で、勝ち目のない中、僕は雪玉をくらい続けた。
「わぁ」とか「きゃぁ」とか、声が明るい空に響いていた。
ひとふざけが終わると、疲れた僕らは、3人でその場に寝転んだ。
雲がない綺麗な空が見える。
今日はいい天気だ。雪遊びにはわるくない日だ。
「空が綺麗」石川さんがいう。
「そうね、綺麗」麻美が答える。
「空の青さは、宇宙の色が透けているっていうよね?」石川さんがいう。
「なんか太陽光の波長が、大気でどうのこうして、青だけ見えるとか、読んだ」僕が答える。
「その説明、何もわからないよ」石川さんが笑う。
「無理に難しいこと言わなくていいって」麻美も笑う。
そして僕らは、雪だるまとかまくらを作る。
僕はかまくら係で、女子2人は雪だるま係だった。
2人は楽しそうに、雪玉を大きくしている。
僕は、1人でかまくら作りは割り振り違くない? と思いながらも、2人が楽しそうなので、1人で頑張ることにする。
周辺の雪をひたすらかき集め、人が入れそうなくらいの山盛りになったところで固めていく。
ガチガチの硬さになったら、入口になる部分をくり抜いて、そこからさらに中の雪を掘り出しながら雪の壁を作っていく。
柔らかそうな部分は、外に出した雪を持ってきて、穴を開けないように固め直す。
そんな作業を夢中で、2時間くらいしていたと思う。
なんとなく形が出来上がってきた。
そこで一休みしたくて、2人をみると、出来上がった雪だるまによりかって、談笑してた。
雪だるまの腕は木の棒で、目と鼻は石、口は丸く曲がった木の棒で、笑顔の雪だるまがこっちを見ている。
「あれ?もうできたの?」
「ずっと前にできたよ」石川さんが答える。
「じゃあ、こっち手伝ってよ」
「だって、あんたが一生懸命なんだもん」麻美が答える。
「作るってると夢中になるよ。ともかく、もう少しだから早く手伝って」
2人は顔を見合わせて、一緒に立ち上がるとこっちらにやってくる。
「けっこう、いいできね」麻美がいう。
「私、中やるね」石川さんがいう。
石川さんが内側を、僕と麻美が外側の雪の壁を固めて崩れないように調整してく。
昼前から遊んでいるから、そろそ夕方だ。周りは暗くなりはじめている。
そして、やっとかまくらが完成する。
「できたー」
「できたねー」
みんなで歓声を上げる。
「早速、中に入ろうよ」僕がいう。
「ちょっと狭くない?」麻美がいう。
「大丈夫、3人は入れるよ」石川さんがいう。
石川さん、僕、麻美の順番でかまくらに入る。
さすがに、中学生が作れるかまくらでは3人には狭かった。
かまくらの中に入ると、それぞれ持ってきた弁当を食べる。
「もう夕飯だね」石川さんがいう。
「お腹すいた」麻美がいう。
「昼に食べ損なったからね」僕がいう。
そんなことを言いながら、3人で狭いかまくらの中で身を寄せ合う。
弁当を食べ終わったら、昼間からずっと動いてたせいか、みんな少し眠くなっていた。
僕らは、3人で寄りかかりながらかまくらの入り口から外を見ている。
その時、雪が降るはじめてきた。
「あぁ、綺麗」石川さんがいう。
「また、積もりそうだね」僕がいう。
麻美は無言だった。
麻美を見ると彼女は、僕の肩で眠ってた。
無邪気な寝顔に、僕と石川さんは顔を見合わせて、笑顔になる。
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