第9話 塾に行く

学校の中間テストが実施され、僕はあまり良くない点をとった。そのため、次の期末テストや、少し先の高校受験のために、親から塾に行くように言われた。

卓球部の後で、20時ごろから21時過ぎごろまで週に3回ほど、町内の塾に通うことになる。そこでは、同じ中学の人見(ひとみ)と浅倉さんと一緒になった。

二人とも同級生だったが、クラスは別だった。人見は小学校は同じだったが、あまり話したことはない。浅倉さんは、ほぼ初対面だった。


塾の先生は若い男性で、話がおもしろかった。

何回か通うと二人の同級生とも仲良くなり、勉強だけではなく、先生を交えて雑談もするようになった。大きな塾ではなく、マンションの一室を使った小規模な塾だったので、生徒がそもそも多くはなかった。部活の後に、勉強は正直しんどいが、それでも塾は楽しくなってきていた。


部活帰りの時間は、塾がある日に僕は少し早めに帰ることになった。そのため、石川さんや麻美と過ごす時間も少し減ることになる。それは残念だった。二人と過ごす部活帰りは、とても楽しかったから。


そして、石川さんとはあれ以来、何も進展がない。というか、僕が引っ込み思案で、何も進まない。石川さんもそれをわかって、適度な距離をおいてくれていた気がする。


その日、僕は塾で英語の講座を受けていた。英語が不得意な僕には、ちょっと苦痛な時間だ。message(メッセージ)を発音してほしいと先生に言われる。

そのまま読めば分かると言われた僕は「メッサゲー」と読んで、笑われた。

たぶん、人見と浅倉さんには読めていたんだろう。恥ずかしいけど、先生がうまく笑いに変えてくれて場が和む。ある時は、3人で海外に実在する都市の名前を一個づつ上げていく遊びなんかをしていた。僕がアメリカのフェニックスを言うと、頭のいい人見がよく知ってるなぁと驚いていた。名前がかっこいいので世界地図か何かで見て覚えていた気がする。不死鳥の「フェニックス」はRPGゲームにはよく出てくる。


そして別の日、今日は理科の講座だった。分子結合がどうのとか、化学元素がどうのとか、そんなことを家で予習していった。しかし、さっき覚えたはずの化学元素が思い出せないなぁ、と思いながら塾に入ると、僕は驚いた。そこには、人見と浅倉さんと以外に、石川さんと麻美がいたからだ。

「え? なんでいるの?」僕が聞く。

「ここが塾だから」麻美が答える。

石川さんを見ると、にこっと笑顔を向けてくる。

「二人とは知り合いなんだね? それはよかった」

先生が僕に聞いてくる。

「知り合いですね」

「知り合い以上でしょう」麻美が言ってくる。

「幼馴染です」

「二人とも?」

「いや、まぁ・・・、そうですね」

石川さんは小学一年から一緒なだけだけど。先生からすれば幼稚園からと小学一年から知り合いは同じかなと思い、そう答える。

「それじゃ、全員そろったので始めようか」

先生の声で、僕は空いている席に着く。

マンションの一室に、5人分の机は、いつもよりそこそこ狭く感じる。

僕が空いている石川さんの隣に座った。

「どう? 驚いた?」

石川さんが小声で聞いてくる。

「いきなりだから驚いたよ。あれ? なんか同じようなこと、前にも言ったような・・・?」

「・・・」

「・・・」

僕らは、キスしそうになった日を思い出す。

「何、いちゃついてるのよ」

後ろの席から麻美が言ってくる。

「お前、うちの親にここの塾、聞いたな?」

「だったら、何よ」

「さぁ、じゃ始めよう」

騒がしくなりそうだったので、先生が仕切り直しする。

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