ゴーストラビリンス
Danchou
第1話
『ゴーストラビリンスって知ってる?』
中学3年の夏の帰り道。まだ、太陽が降り注ぐ道を汗をかきながら歩く僕に、友人のA君か聞いてきた。
それまでは、最近読んだ漫画の話や彼女が欲しいとか、くだらない話をしてきた中での質問である。
A君は、3年生になってから、初めて一緒のクラスになり、ゲームが得意で意気投合した。
夏休みだというのに、補講のせいで、学校に行っていたが、A君と会えるのは嬉しい。
知らないことを伝えると、A君は、目を輝かせて、詳しく説明してくれた。
要は、お化けが出る迷宮を脱出するオンラインのVRゲームらしい。
基本無料らしいので、帰って、やらないかと誘われた。
A君と別れ、家に帰って、ゲームの準備をする。
もう、夕方になりそうだか、一度遊ぶのにそこまで時間がかからないらしい。
ゴーグルをつけて、ゲーム機本体を起動。
ショップから検索して、ゴーストラビリンスをダウンロードした。
タイトルは、迷宮の上に英語で、ゴーストラビリンスと表示されている。
A君からルームの招待されていたので、そこに入ると、A君がいた。
A君は、スーパーヒーローっぽいマントのキャラで、僕は、おまかせの男キャラを選択していた。
『初めてもいい?』
僕が、大丈夫と答えると、A君は、開始のボタンを押した。
ゴーストラビリンスは、4人のプレイヤーが、ゴーストを操る1人のプレイヤーから逃げながら、地上を目指すゲームだ。
誰か1人でも脱出できたら勝ち。全員捕まったら負けになる。
今回は、僕とA君以外しかいないので、ランダムで世界中の誰かと協力することになった。
人気のゲームなのか、1分もしないうちに、参加者が埋まって、ゲームが始まる。
画面が黒くなり、ロードが終わると、そこは、迷宮だった。
ほんの少し薄暗く、先の方がかろうじて見えるぐらいだった。
迷宮ですることは、2つ。
1つ、ゴーストに見つからずに、梯子を登ること。
2つ、遭遇した時のために、アイテムを手に入れること。
今回は、3階までなので、3回梯子を登れば地上に出られる。
最初から持っている懐中電灯をオンにして、歩き始めた。
足音は、響かないが、歩くたびに、音がする。
『音が攻略の鍵なんだよ』
A君は、そうアドバイスしてくれた。
ゴーストに会いそうになったら、立ち止まって、音を消さないといけない。
歩き回っていると、行き止まりだったが、宝箱を発見する。
開けてみると、60秒間姿を消せる忍者マントを手に入れた。
アイテムは、3つまで持つことができ、後、2つ持つことができる。
良いアイテムがゲットできたと、喜んでいたら、赤子の泣き声が聞こえてきた。
僕は、急いで、忍者マントを使用する。
赤子の泣き声は、徐々に大きくなり、姿を捉えた。
現れたのは、人間サイズのなめくじだった。
なめくじは、空の宝箱を見ると、振り返って消えていった。
ナメクシの歩くスピードは、現実のように遅くなく、人間の速度と一緒だった。
忍者マントの効果が消えるまで、動くことが出来なかった。
アイテムは、一度使うと、消えてしまう。
効果が消えた後、僕は、息をはいた。
怖〜、キモ〜。
真っ白い幽霊が、出てくると思ったが、違ってた。
赤子の声は、聞こえなくなったが、怖いので、ゆっくり進むことにする。
途中、宝箱を見つけ、しばらくすると、梯子を見つけた。
やっと、2階にいける。
梯子を登ると悲鳴が聞こえた。
えっー何何。
画面上の、4つある人のマークの1つに、バツが貼られた。
どうやら、誰かが、捕まったらしい。
A君が言っていた。
ゴーストは、人を食べると進化する。
果たして、どんな進化をしたのだろうか。
怖いようで、楽しみだぁぁぁぁぁあ、出た。
ナメクジに沢山の足がついてた。
足欲しかったよね。
ナメクジは、口を大きく開けて、僕を食べようとする。
距離は2〜3メートル。
僕は、手に入れたアイテムを、ナメクジに投げた。
アイテムは、閃光玉。ゴーストを数十秒ひるませる。
ナメクジが、あわあわしている間に、僕は、逃げ出した。
楽しいな、このゲーム。教えてくれた。A君に感謝だ。
その後は、ゴーストに遭遇せずに、ラストフロアにたどり着くことができた。
ラストフロアが、他の階と違うところは、天井が高く、梯子が見えていることだ。
今まで登ってきた梯子より、かなり長い。
あの梯子を登りきれば、地上に出られる。
ゴーストに会わないように、慎重に急ぐ。
悲鳴。
誰かが、ゴーストに捕まったらしい。これで、残り2人。A君は、生き残っているだろうか。
プレイヤー同士は、会話できないため、安否を確認することができない。
心配しつつも、ゲームの得意なA君は、生き残っているに違いないと思うことにしよう。
ゴーストに遭遇せずに、梯子にたどり着けたが、その長さは、最期の難関だった。
どれくらいかかるか分からないが、登るしかない。
ボタンを連打すると、速く登れるので、コントローラーが、小刻みにゆれる。
ゴーストは、梯子まで、追いかけてくるのだろうか。
3分の1ぐらい登ったところ、ふと不安と期待を持つと、獣の雄叫びがした。
恐る恐る、下を見てみると、人間のように手と足が付いたナメクジがいた。
足の次は、手が欲しいよね。
ナメクジが、梯子に、手をかけ始めたので、天井を目指す。
下を見ると、ナメクジは、自分よりやや速く登ってくる。
追いつかれるのは、時間な問題だろう。
『うぉおー、負けてたまるかぁ!』
速度は、変わらないが、雄叫びをあげる。
登って行くにつれて、天井に近づいて行く。
上を見ると取っ手の付いたドアが見えた。
後、もう少し。
ナメクジが、大きな口を開けて、迫ってくる。
後、もう少し。
天井にたどり着いて、取っ手を掴むが開かない。
うぉーい。どうやら、連打しない開かないらしい。
一心不乱に連打するが、ナメクジは、下から迫ってきて、手を伸ばしてきた。
捕まる。
後は、頼んだ。
と勝手に思いを託していたら、花火の音がした。
人とは思えない悲鳴と共に、下から強風が吹き上がる。
下を見ると、ナメクジが迷宮へと落ちて行く。
よく見えないが、スーパーヒーローが見えた。
A君だ。
A君が、アイテムを使って、助けてくれた。
グッジョブをしているようなきがした。
『うぉぉー、後は、任せろ!』
僕は、一心不乱に、ボタンに押す。
ドアが、ちょっとずつ開いていった。
外の光が少し見えてくる。
ドアが、音を立てて開いた。
地上に出ると、崖の上だった。
時間は夜だが、少し明るい。
後ろは、森で、前は、海。
迷宮から、出たドアは消えていった。
動ける範囲が、少なくて、うろちょろしていると、海から太陽が登ってくる。
夜明けの光は、とても綺麗で、画面を白く塗りつぶした。
そして、winという文字が浮かび上がった。
安堵の息を吐いた後、ゴーグルを取る。
ゲームの夜明けと違い、夕方から夜になっていた。手に持っているコントローラーは、冷や汗なのか、握りしめすぎた汗なのか、濡れている。
コントローラーを机に置く。
面白かった。
久々に面白いというゲームをやれた気がする。
基本無料というが、課金要素は、何か気になり始めた。
調べ始めると、課金をすると、プレイするキャラクターやゴーストを、有名なキャラで、プレイできるらしい。
また、今やってる映画やアニメのキャラクターを無料で配布などもやっていた。
ゴーストも、プレイヤーと同じ、自分で作ることができ、ゴーストになって、プレイヤーを襲うことができる。
登録すれば、世界中のプレイヤーが使ってくれるわけだ。
あの、ナメクジは、キモかった。
ナメクジの制作者も、この世界にいるのだろう。
はぁ〜、上手くできてんな。
感心していると、A君から、メッセージが届いた。
『もう一戦やらない?』
時計を見ると、夕飯前だが、今日は、両親が遅いのだった。
『ok』
返事するが、今度は、ゴーストをやりたくなった。
プレイを振り返って見ると、ナメクジのプレイヤーは、自分をすぐに捕まえられたと思う。
A君は、言っていた。
ゴーストを操るプレイヤーは、パフォーマーでなければならない。
赤子の泣き声も自分が近くにいるのを知っていたから出してくれたのではないだろか。
ゲームとしては、すぐに捕まえるのが正しい。ただ、すぐに捕まえてもつまらない。
ナメクジのプレイヤーは、精一杯脅かしてくれた。
なら、今度は、自分が脅かそう。
作る時間が惜しいので、ランダムで複数出てくるゴーストを選択する。
強そうな奴がいい。
目に止まった、ミノタウロスみたいなゴーストを選ぶ。
僕は、A君を捕まえることができるだろうか。
みんなを、楽しませることができるだろうか。
期待と不安を胸に、僕はスタートボタンを押した。
ゴーストラビリンス Danchou @ogatakouiti
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