第56話 S級へー3

 これがレイナのステータスか。

前、車で送ってもらったときは話すことで精一杯でよく見れてなかったけど……。


 俺はレイナを見つめる。

そして映し出されたのは、化物じみた魔力とそれでもその力を生かせない理由。

俺が見た魔力量で断トツの一位。


 しかもその力は、デバフされているという事実。


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名前:銀野レイナ

状態:封印

職業:聖人【覚醒】

スキル:光の盾、光の刃

魔 力:734560

攻撃力:反映率▶20%=146912

防御力:反映率▶20%=146912

素早さ:反映率▶20%=146912

知 力:反映率▶20%=146912


装備

・封印(装備によるステータスの変更はできません)

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「封印……」


 俺はその状態の封印に集中し、詳細を見た。

封印という状態が人為的なものなのか、生まれた時からなのかはわからないが、デバフ効果であるのは確定している。


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属性:状態

名称:封印

入手難易度:ー

効果:魔力を封印し、封印した分だけ自身の魔力とする。

   また封印対象の反映率を20%に固定する。

説明:封印術のスキルを持つ覚醒者によって施される。

解除方法:封印を施したものが死ぬもしくは、解除する。

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「……解除してあげたいけど、封印をした奴が死ぬ。一体だれが……それに職業は聖人、これも覚醒。彩と一緒……」


 封印されて魔力74万ってもしかしてレイナは実は超越者なのか?

超越者と呼ばれるこの世界の頂点達。

S級の枠を超え、世界に5人しかいない最強の覚醒者達と同じ……。


「どうしました? 灰さん?」


 レイナを見つめて暗い顔をする俺に彩がどうしたと聞いてくる。

レイナにはこの目のことは言っていないので後で彩に聞いてみることにした。


「あとで話すよ、それより景虎会長は?」


「まだ会議が長引いているかと……今日は龍の島奪還作戦の会議と聞いてます」


「……そっか、それもあるから俺も強くならないと」


 俺は景虎会長に参加してほしいと言われたことを思い出す。

参加する大義はないし、理由もない、命の危険もある。


 でも俺は参加しようと思っていた。

理由はと聞かれると、景虎会長が参加してほしいといわれたことがある。

力のある者の責任、とまぁかっこいいことを言えばそうなるがレイナが参加するのなら俺はできれば参加したい。


「灰も参加するの?」


「そのつもり」


 レイナが参加するのに、ただ待っているのでは俺の心が許さなかった。

俺は彼女に命を救われている、なのに彼女が危険な闘いにいくのに傍観はできない。


 昔と違って俺にはこの眼と力があるのだから。

ましてや本当の力を封印されているレイナではもしかしたら何かが起きてしまうかもしれない。


 だがそうなると、S級下位程度では無理かもしれない。

守りたいのに、守られるのが関の山。

なら俺はまだまだ強くならなければならない。


 B級キューブを攻略するか、もしくはA級キューブを。


「でもそのまえにクラスアップチケットだな。スキルは破格の性能を持ってる。強く成れるはずだ」


 俺は一人つぶやいた。

お昼を食べた俺達は待機しているが一向に景虎会長がくる気配もない。

なので俺はレイナと世間話をしようと思った。


「レイナが高校のときに救った中学があるの覚えてる?」


「わからない……要請があったところの敵は倒してた」


「そ、そか……」


 俺は中学生のころレイナに救われている。

だがレイナは一切覚えていないようだった、相手が覚えていないことに対してありがとうというのもな。

……と思っていたら扉が開く音と大きな声が聞こえてきた。


「すまん! 遅くなった!!」


 俺達はすぐに出迎えるように玄関へと向かった。


 そこには会長と後ろに二人の男。

一人は田中さん、そしてもう一人の初対面だが、あまりに有名すぎるその男をみて俺は叫ぶ。


「て、天道龍之介!?」


 日本最強戦力、名実ともに世界トップクラスの攻略者。

アヴァロンのエースであり、代表でもあるまるで傭兵のような男だった。

筋肉もりもりで、横の会長よりもガタイがいい。


 無精ひげとボサボサの髪、たばこを加えてだるそうにタンクトップを着ている。

腰には真っ黒な剣を刺し、まるで侍なのだが侍というよりは傭兵だった。


「あ˝ぁ˝?」


 俺が呼び捨てにしてしまったからなのか、人を殺しそうな目で俺を見つめる。


「す、すみません。はじめまして、天地灰です。天道さんの噂はかねがね……」


 俺はへりくだった。

正直めちゃくちゃ厳ついし、怒らせたら殺されそうだと思った。

天道さんが眉間にしわを寄せながらゆっくり頭を下げる俺のもとへと歩いてくる。

 

 咥えていた煙草を手に取った。


「そんな昔の不良じゃあるまいし……」


 俺は思った、多分根性焼きだ。

たばこを押し当てて、根性を確かめると聞いたことがある。


 しかしそうではなかった。


 天道さんはその分厚そうな自分の手にたばこを押し付けて自分で消した。

熱そうだが、魔力が守ってくれているのだろうか。


 そしてその逆の手で俺の頭を掴む。


「あぁ、お前が一誠さんと会長がいってたガキか。よろしくな、俺は天道龍之介だ。まぁ仲良くやろうや」


 俺の頭をわしづかみにされたが、わしゃわしゃと優しく頭をなでられた。

それに思っていた言葉よりもずっと優しい言葉を駆けられる。


「灰君。龍之介は見た目は怖いが面倒見のいい兄貴のような男だよ。安心して」


 田中さんが少し笑ったように俺に言った。


「一誠さん、俺ってそんな怖いっすか? おい、レイナ、彩。俺怖いか?」


 頭をボリボリとかきながら困ったような表情で天道さんは、彩とレイナに聞く。


「龍さんは怖いですよ。初めて会った小学生のとき私は泣きました。食われると思いましたね」


「龍は……オーガみたい? 強そう」


「まじかよ、傷つくぞ……ひげか? このひげのせいか? 剃るか……」


 そういって髭をじょりじょりと困ったように触る天道さんは、少し可愛くすら見える。

見た目は怖いが、とても中身は温かい優しい人なんじゃないかなと俺は思った。


(それでもこのステータスはビビるよ……)


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名前:天道龍之介

状態:良好

職業:侍【上級】

スキル:覇邪一閃、居合切り、看破

魔 力:535740

攻撃力:反映率▶50%=267870

防御力:反映率▶50%=267870

素早さ:反映率▶50%=267870

知 力:反映率▶25%=133935


装備

・黒龍宝刀=攻撃力+50000

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 そのステータスは化物だった。

魔力53万、どこぞの宇宙の帝王並みに強いな。

魔力量でいえばレイナのほうが多いのだが、それでも反映率によってレイナを上回っている。


 正真正銘、世界の頂点達に数えられる日本最強、武術においても相当な達人と聞いている。

今の俺でも相手にならずに敗北するだろう、にしてもすげぇ。


「なんか強くなった気がしてたけど……上には上がいるって感じだな」


 小さくつぶやく俺を見て田中さんと会長は笑う。

きっと俺がステータスを見たことに気づいたんだろう。

俺達はそのまま応接室へと戻った。


「それでじゃ、今日話した内容じゃがな」


 全員が席に付き景虎会長が口を開いた。

だが俺が割り込むように手を挙げて発言する。


「そのまえに会長いいですか? 龍の島奪還作戦ですけど……俺は参加したいと思います。すみません、返事が遅れて」


 俺は事前に考えておいてくれと言われたことを全員の前で答えた。


「命の保証はできんぞ? いいのか?」


「覚悟はできてます、ですが死ぬつもりはありません。俺の力が必要かもしれませんし」


「……そうか。実は期待はしとったが……ありがとう、灰君。日本の代表として感謝する。じゃあ心置きなく話せるな。今日我が国から三名参加すると中国とアメリカに伝えておいた! レイナ、龍之介、灰。この三名じゃ」


 そして会長は俺にウィンクする。


「灰君なら行くといってくれるとおもっとたぞ。というかほぼ決まっておったじゃろ、心の中では」


「はは……そうですね、正直S級キューブ。少し好奇心もあります、やっぱり俺心から攻略者みたいで。ワクワクもしてます」


 俺は本当のことを言う。

B級はすでに敵ではない。

A級ですら今の俺ならそこまで苦戦しないだろう。


 でも俺はヒリヒリした戦いは好きだ

死にたくないといっていたのに、よくわからないことを言っていると自分でも思う。

でも俺は強くなっていく自分が好きだった、自分の意思で世界が変わることが楽しかった。


「ガハハ、いいのう、いいのう! 若さじゃのう。……田中君やっぱり儂もいきた──」


「だめです」


 会長がテンション高く、作戦に参加すると言いそうになるが田中さんが止める。


「──厳しい。儂もみんなと一緒に戦場を駆けまわりたいのぉ」


「そんな声を出してもだめです。あなたはこの国のトップなんですよ? なにかあったらどうするんですか!」


「そのときは、田中君を会長に推薦しておく。どうじゃ、そろそろ協会に戻ってこんか?」


「残念ながら私は民間のほうが向いているようなので、嫌ですね」


「はぁ……有能な人材はみんな民間にいってしまうのぉ……深刻な人材不足。やはり灰君を……」


「はは、灰君は我がアヴァロンのエースなので、それもだめですよ。若い者達の台頭を喜びましょう、会長」


 そういって田中さんは泣きそうになる会長の背中をさする。

こう見るとただのおじいちゃんのようだな、ただしガタイが良すぎるが。


「で話を戻すとだね、その作戦は一月後となった。ならば行くだろ? 灰君」


「え? 何がですか?」


「そりゃ決まっている……それまでに強くなるために。日本に三つあるA級キューブ、時期的に今なら……」


 ニヒルに笑う田中さん、眼鏡の奥が怪しく光る。

そして告げる言葉は期待していなかったというと嘘になる言葉。


「沖縄だ」


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