𝐆𝐢𝐫𝐥𝐬 Fleets‼️〜艤装少女たちは憂乱の海にて咆哮せり〜
ふぃるめる
第1話 激突 Tokyo Bay
「あれが報告にあったステーツの部隊ね」
浦賀水道には、一隻の基地母艦とそれを囲むように艤装を纏った少女達が輪形陣を構成している。
「堂々と
そしてそれを監視する任務に就いている俺達三人もまた、それぞれに固有の艤装を持っている。
今は陸上にいるから、纏ってはいない。
それに、纏えば相手の艤装のソナーに発見されてしまう可能性が出てくる。
ちなみに艤装というのは、この場合でいうと軍艦の武装のことを示している。
例えば俺の艤装クラス、
「これは停めるべきかな?」
不安そうに顔を曇らせながら、
彼女は、俺達の戦隊のリーダーでクラスは
「総司令部からの通信は無いし、まだ戦闘は始まってないから、今は様子見でいいと思う」
そう言うと明莉は、胸を撫で下ろした。
「え〜つまんない!アタシの魚雷は、撃ちたくてうずうずしてんのにさ〜」
今夜、監視任務に就いているもう一人のパートナーの絵梨奈が不満そうに言った。
彼女のクラスは、俺と同じ
「そんなこと言ったって俺達が戦闘の発端になるわけには行かないんだからさ」
「む〜
「絵梨奈が、不真面目すぎるだけなんだよ……」
俺は、ため息混じりに言った。
「にしても〜
絵梨奈が名前を出したのは、今日の任務に参加していない俺達の戦隊のメンバーでクラスは
ちなみに、参加していない理由は姉妹での喧嘩に艤装を顕現させたことによる謹慎処分だったりする。
「あいつら仲がいいんだか悪いんだか……」
俺に対しては、二人とも優しいのに何故か時折、姉妹で激しい喧嘩をするのだ。
まぁ例に漏れず喧嘩するほど仲が良い関係で二人でいることも多い。
「それ多分だけど〜駿人のせいだと思うけど?」
なんでそうなるんだよ……。
「いや、なぜに?」
「そんなの〜自分の胸に聞いてみなよ」
絵梨奈は気だるげに言うと、監視対象であるステーツの部隊に目線を向けた。
その時だ――――。
情報端末が緊急通信を受信した。
ヘッドセットに耳を当てると
『
数は、ざっと十二……俺たちには、荷が重い。
そしてその十二人は、艤装の砲を旋回させ
これは、威力偵察と見るべきか?
同時に水上偵察機が飛び立っていく。
水上偵察機を運用できるのであれば、あの十二人の中に
「さて、どうします?」
俺達、第一水雷戦隊のリーダーは明莉だ。
ここから先の行動の決定権は彼女にある。
「と、とりあえず私達は、統制魚雷による一斉発射を行った後、反転して湾外へ離脱しますっ」
相手には、圧倒的な数の差があって勝てない。
しかし、湾内へ殴り込みをかけてきた敵をみすみす逃すわにも行かない。
その二つの事情を考慮した折衷案というところか。
「了解」
「了〜解!」
絵梨奈は、きゃるんって感じで敬礼をした。
「
「魚雷ちゃん達〜仕事の時間だよ!
明莉と絵梨奈は、それぞれに固有艤装を纏う。
そして俺も、
「
六十一mm五連装魚雷が艤装には三基。
連合艦隊最速にして最強の
艤装を纏った俺達は、夜の海へと駆け出す。
しばらくしてステーツの部隊を魚雷の有効射程距離内に捉えた。
「では、絵梨奈に駿人くん、左舷魚雷戦用意!」
明莉の連装魚雷発射管四基八門が、絵梨奈の四連装魚雷発射管 二基八門が、そして俺の五連装魚雷発射管三基十五門が左舷へと向けられる。
「予測進路、射界は各自に任せます。撃ったら即撤退です!」
ステーツの部隊は、低速で移動しているし、距離もそれほど遠くない。
「射撃準備完了」
「アタシも大丈夫!」
俺達が準備完了を伝えると明莉は頷いた。
「それでは第一水雷戦隊、魚雷発射始め!」
ザブンと音を立てて一斉に、三十一射線の魚雷が、夜の海に走り出す。
「それでは、退却します!」
このままここにいれば、発射位置を特定され反撃を受けかねない。
しっかりと戦果を確認したい気持ちは、わかるがそれは出来ない相談だ。
一斉に反転して
そして背後からは、爆発音が三つ響いた。
「お〜当たったみたいね!」
絵梨奈がハイテンションで海面を跳ねて水飛沫を飛ばす。
「きゃあっ!びしゃびしゃになっちゃったよ」
その飛沫を絵梨奈の隣を走る明莉がもろに浴びた。
「いいじゃん、後で一緒にお風呂入ろ?」
任務が終わった開放感で明莉と絵梨奈は、基地への帰還後に何をするかを話し始めた。
「二人とも帰還するまでが任務だ」
水を差すようで悪いが一応注意する。
「駿人くん、お堅いこと言わずにさ〜」
絵里奈が横から腕を絡めて言ってきた。
しかし次の瞬間、前方で
「明莉、絵梨奈、散れ!」
少し強引だが、二人を突き飛ばす。
さっきまでいたところに、水柱が立った。
そして前方で再び発砲炎が光る。
「ちょっとぉ突き飛ばすのはヒドくな〜い?ってきゃあっ!」
今度は、絵梨奈のそばに着弾。
「ぜ、前方より敵、急接近!」
明莉は、パニック状態になりながら叫ぶ。
電探に映った敵影は、三人分だ。
明莉を連れて、絵梨奈が回避行動をとっているからかろうじて二人は無事だ。
「二人は逃げろ!俺は、足止めをする!」
この中で最速なのは、どう考えても俺だ。
明莉には、この後も第一水雷戦隊の指揮を執って貰わなきゃ困るし、パニック状態の明莉を一人で帰還させるのは心配だ。
だから、絵梨奈にも付き添って貰うのがマストだろう。
「それって、駿人が危なくない?」
「そ、そうです!私が指揮艦として残ります!」
二人は、俺を心配してそう言ってくれるがこの状況では、二人に構ってる暇も無さそうだ。
「いいから帰還しろ。俺は【島風】だ。そう簡単に死んだりしないさ」
そう言い残して全速前進、砲戦で敵わないなら魚雷戦に持ち込めばいい。
それなら俺のクラス
だから一気に距離をつめる。
しかしそれも次の瞬間、判断ミスだと気付かされる。
「あらあらぁ、単艦突撃なんてぇ馬鹿なことするのねぇ」
目前の敵は――――
ステーツの誇る最強の軽巡洋艦だった。
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