夏の終わりと高楼の夢

齋宮 久遠

第1話 序章

うだるような熱い夏のある日

気がつくとそこは、去年父が買った、あの山奥の荒れた田んぼの土地のある場所でした。


田んぼと道の間には、1mくらいの幅の水路があって、あまり手入れされていないようでした。


右手の方をみると、去年もあった謎の木造の高い高楼があり、下層は開けていて、通りけられるようになっていて、その奥には広場ともう一軒の高楼が立っている。

車道は、高楼の手前。ボクの立っている後ろ方向へも伸びていて、山へと登っていく古い道が続いている。


水路から道を挟んで山側にも畑があり、道の山側には側溝がある。

身長くらいの擁壁の上には畑用の細い用水路が敷かれていて排水は側溝へと流れ、どこかで水路へ流されるようになっているみたい。


今回、なぜここにきているのかは判らないけども、

この夢は以前も見た夢で

前回は、夢の中の時間では去年で、父と妹と一緒に来ました。

父は去年この土地を買ってから亡くなったので、1年くらい時間が経過しているみたいです。


そして今回はボクと妹の二人で来ているようです。

隣に車があるから、車で来たようでした。


蝉がうるさく啼き続けている―――。


ぼーっとしてても仕方がないから散策をすることにしました。

妹もあたりを見にいくようでした。


さっきから気になっていた高楼に視線を向け歩き出す。

高楼の内側には農具やら何かわからない古びた木製の道具なんかが無造作に置かれていて。

それらを眺めたり、触れたり、高い天井を眺めながら奥へと歩みを進める。


なぜこんなところに、こんな様式の高楼なんかがあるのか不思議に思う。


高楼を抜けて奥側へと出ると、石畳みの敷き詰められた広場になっていました。

その広場の奥にまた高楼があり、一階は廻り舞台になっているようで、昔の人が、集落の祭りや、その演目で使った場所かもしれないと考えながら見て回る。


今は昔と思わせるような、寂しい感じのする広場を一通り見て回って、再び建物や周りの者を眺めながら最初の場所へ戻ってくる―――。


この所有している土地は、山を越えた場所にあって、車で通ってきた道は、山をぐるっと迂回してやってくる道になっている。

山を越えてくる古い道もあるらしいけど、今は整備されておらず危険という事で、地元の人しか使わなくなった道なのだそうです。

そして山を回って下りてきたところにある少し広めの開けたこの土地を、父はどういうツテで知ったのか判らないけど、それで買ったのがここというわけ。


ここも広いとはいえ、山間には変わりないので、向い側にも低い山が並んでいる。

ここはおそらくは水田だったのだろうと思う。

高楼の側には大きい溜め池があって。

道のある部分からは、張り出した形で石垣の上に高楼が半分建っている。


本当に何のために建てられたものなのか判らない。

お寺でも神社でもなさそうなのに、格式は高そうで、不思議な存在感を放っている。


奥の高楼からは、溜め池の方へ、棒のようなものが張り出していて

お祭りなどの時に、幟(のぼり)や何かが飾られるようになっている。


道沿いにある水路。

手入れされていないと泥がたまって、周辺の人も困るだろうから、すこし水路の中の泥がどうなっているか見に行ってみる。

ぱっと見た感じでは、そんなに泥は溜まっていないようでした。

土地への引き込み用の部分も埋まったりはしていないようで一安心。


この土地は使う予定はないけども、売りに出したところで、そうそう売れるものでもないし。

かといって完全に耕作放棄地にすると、周りの迷惑になるので、水を入れて雑草だらけにならないようにしてあるみたいでした。

村の人がしてくれたのかな?

水面が青空と雲を反射していて綺麗で、一見すると池との違いがわからなくなってた。


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