第3話 モンスター肉食の歴史

 モンスター肉食の歴史はそこまで古くはなく、慣習化したのはつい最近のことだ。

 なんといってもクソ不味い。悪臭がひどく口にいれると、吐き気をもよおすほどの味だ。元がダメならどう調理してもどうしようもなく、その上、適切に処理をしないと毒が残る。平和をおびやかすモンスターは国家の安寧あんねいため打ち倒されてきたが、その肉を食らうことは長らく忌避きひされてきた。

 歴史の変わり目は、強国ガシュンが弱小国リオワに討ち果たされた時のことだった。

 勝ち目はないと思われたリオワの大勝利に周辺国は驚き、すぐさまスパイを放ち勝利の謎に迫ったが、真実が明かされるや絶句ぜっくした。リオワは戦士たちにモンスター肉を食べることを強要していたのだ。

 はるか昔から、モンスター肉を食べると魔力が上昇すると実しやかにささやかれていたが、力を得ようとした者たちのしかばねの山もまた築かれてきた。事実、リオワも多大な犠牲を払ってモンスター肉を安全に食べられる方法を模索してきた。

 最初はあからさまな嫌悪を示し糺弾きゅうだんしていた周辺国だが、どんどん勢いを増し勢力を広げるリオワに慌てふためき、やがて富国強兵のためモンスター肉食を奨励しょうれいし始めた。

 民の手本となるべく、各国の王の食前にミノタウルス肉やバジリスク肉がのぼり、笑顔で肉を頬張る王の写真が至る所へ貼られたという。研究によると、モンスター食以前以降では、人々の魔力量は二倍以上の開きがあるそうだ。

 しかしモンスター肉の普及の一方で、適切に処理されない肉が販売される事例が頻発ひんぱつした。悲惨な死亡例もあり、国民の健康の保護のため各国は取り締まりを強化し王立モンスター解体処理場を各地に建てた。また、国を超えての法整備を求める機運が高まり、モンスター法が締結ていけつされた。帝国暦二百八年のことで、新たな時代の幕開けでもあった。

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